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山下樹里が語る原田裕規による公開制作「ドリームスケープ」と「NAMコレクション2024第Ⅲ期 もうひとつの風景」(長野県立美術館)。「風景」から再発見されること

長野県立美術館のアーティスト・原田裕規による滞在制作「ドリームスケープ」と、原田がコレクションを調査し、キュレーションした「NAMコレクション2024第Ⅲ期 もうひとつの風景」。ふたつの展覧会によってコレクションに新たに注がれた視線はどのようなものだったのか。担当した同館学芸員・山下樹里が解説する。

文=山下樹里

「公開制作vol.4 原田裕規 ドリームスケープ」会場風景  photo by Katsura Muramatsu (Calo works Co. Ltd.)

 長野県立美術館は、1966年に財団法人信濃美術館として発足し、69年に県に移管されて以来、県内唯一の県立美術館「長野県信濃美術館」として活動してきた。90年には作家から作品や関係図書の寄贈を受けて、東山魁夷館が開館、2021年に「長野県立美術館」としてリニューアル・オープンした。

 リニューアルにあたって、当館はすべての人が気軽に訪れることのできる開かれた美術館として、「交流スペース」「オープンギャラリー」「アートラボ」等、無料ゾーンを拡充した。また、展覧会だけではない様々なスタイルで、多様な人たちに開かれたプログラムを実施している。公開制作はそのひとつであり、作家が一定期間オープンギャラリーに通い、作品を制作し、完成した作品を公開する。観客は、作家の現在進行形の創作活動を見ることができ、作家によるイベントやアーティストトークに参加することができるプログラムである。

 その4回目となる今年度は、取るに足らない視覚文化をモチーフに、テクノロジー、リサーチ、パフォーマンスなどを駆使して作品を制作しているアーティストの原田裕規を招聘した。これまで3回にわたって招聘した作家は、すべて長野県在住、もしくは長野県出身の作家であったが、いっぽうで原田は長野とは縁のない作家である。しかし原田は下諏訪出身の作家、松澤宥の作品《湖に見せる根本絵画展》(1967)に呼応し、諏訪湖畔で「絵」を掲げて見せ続ける作品《湖に見せる絵(海辺の僧侶)》(2022)を制作している。筆者が作家に公開制作をお願いしたいと考えたのも、まさにこの《湖にみせる絵(海辺の僧侶)》を鑑賞したことがきっかけだった。

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