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「第15回上海ビエンナーレ」開幕レポート。非人間との感覚的コミュニケーションを通じてひらく新しい芸術の可能性【4/5ページ】

 3階へ移動すると、ひときわ明るく広い展示スペースが現れる。ここでは、東京を拠点に活動するAKI INOMATAの作品が並んでいる。《How to Carve a Sculpture》と題された本作は、日本国内の5つの動物園にいるビーバーの飼育場に木材を設置し、ビーバーが木材に残す痕跡を記録するところから始まった。その後、かじられた木材を回収し、彫刻家との協働やCNC切削機を用いて、もとの木材の3倍の大きさの拡大レプリカを制作している。

 本作が提起する問いは、「誰が真の作者なのか」というものであるが、この問いを成立させるAKI INOMATAの姿勢こそが、非人間であるビーバーへの対等な目線そのものを表していると言えるだろう。

 同じ展示室の壁には、先日森美術館のMAMプロジェクト033で紹介されたクリスティーン・サン・キムの作品《Heavy Relevance》が描かれている。会場奥には、ペルー出身で現在ユトレヒトで活動しているクリスティーナ・フローレス・ペスコランによる大型の作品《Abrazar el sol (Embrace the Sun)》も紹介されている。広い空間のなかで、ダイナミックな作品同士が呼応しあうような会場構成となっている。

展示風景より、中央:AKI INOMATA《How to Carve a Sculpture》(2018-)、右壁面:クリスティーン・サン・キム《Heavy Relevance》(2024)
展示風景より、クリスティーナ・フローレス・ペスコラン《Abrazar el sol (Embrace the Sun)》(2023-24)

 なお、本展は3フロアで展開されているが、各階の移動はエスカレーターや階段を使うことをお勧めしたい。各作品を様々な角度とスケールで鑑賞することができるだけでなく、作品同士の連関や、鑑賞者の動きを含めた会場内で発生しているコミュニケーションの様子を見ることができるからだ。

会場風景より、3階から見下ろした1階の様子