アジア芸術教育基金会(ASIAN ART EDUCATION FOUNDATION)が中国・上海で運営する現代アートの拠点「AAEF Art Center」の副館長に、美術史家・沓名美和が就任した。
沓名は多摩美術大学や魯迅美術学院で教授を務めるほか、韓国と中国を含む東アジアのアートシーンと深く関わってきた美術史家であり、新たな役割において、日中韓の芸術交流に積極的に取り組み、AAEF Art Centerの活動をさらに拡大させていくことが期待されている。
AAEF Art Centerは昨年11月に上海の水の都、朱家角古鎮に誕生した。かつて工場として使用されていた約2800平方メートルの広大なスペースを活用し、アジアの現代アーティストによる実験的な作品展示やアートイベントを開催している。同施設では、アジア現代美術の調査研究を推進し、とくに日本の「もの派」の研究に力を注いでいる。今後は美術大学の学生を対象としたグローバルな奨学金プログラムも設立される予定で、若手アーティストの支援にも注力していくという。
沓名の就任を記念し、AAEF Art Centerでは11月8日〜2025年6月8日の会期で「もの派の淵源―位相大地を中心に―」と題した展覧会が開催される。本展では、「もの派」の代表作である関根伸夫の《位相-大地》(1968)を中心に、関根と小清水漸の活動の軌跡をたどる。また、2人の作品とともにアーカイヴ資料の展示や国際的なフォーラムも行われ、「もの派」の実態に迫る。本展を通じて、中国における「もの派」の理解がさらに深まることが期待されている。
沓名は副館長就任に際し、AAEF Art Centerが日本と中国、韓国をつなぐ架け橋となり、アジアのアートの魅力を伝える場となることを期待しているとしつつ、東アジアの美術シーンにおける新たな交流の可能性に意欲を示している。