現代美術の見られるスポットが充実している都市として、中国でまず挙げられるのが上海だ。とくに上海ビエンナーレやアートフェアの時期に設定される11月のアートウィーク期間は、ポップアップ展示も多数開催され、街中が現代美術ファンで賑わう。租界時代の街並みやきらびやかな外灘(ワイタン)など、観光地としても見所が多く楽しめる上海は定期的に訪れたい世界の都市のひとつだ。
中国への渡航には現在のところビザが必要だが、トランジットなら数日間ビザなしで滞在できる制度などもあるのでチェックしてみてほしい(*)。上海では、現在ほとんどすべての場所での支払いにWeChatPay(微信支付)もしくはAlipay(支付宝)の使用が必須となっており、かねてより短期滞在者泣かせの状況があったが、最近、WeChatPay・Alipayともに外国のクレジットカードへの紐付けが可能になったので、準備していくことをおすすめする。これに加え、Didiといったタクシーアプリをダウンロードしておけば、買い物も移動もかなり便利だろう。タクシーは日本と比べればかなり安いので利用価値が大きい。市内を縦横に走る地下鉄や、市内を東西に貫くバス「71路」もあわせて使えば完璧だ。
以下に、上海のアートスポットを紹介していく。長く読むことのできる記事を、という依頼に沿って、できるだけそのように努めるが、変化の激しい上海では1〜2年で様変わりということもありうるので実際に訪問する前にチェックは必須である。なお、筆者は昨年12月、artscape誌に「上海アートマップ」を寄稿しており、2000年代からの変化についてはそちらに記述してあるので、興味のある方はご一読を。
上海当代芸術博物館(Power Station of Art/PSA)
上海当代芸術博物館は中国本土で唯一の国立現代美術館であり、上海ビエンナーレのメイン会場にもなる美術館である。発電所だった建物をリノベーションして使用していてとにかく広い。上海ビエンナーレ以外にも、中国現代美術史を独自のリサーチによって掘り下げた展覧会や、建築、デザインについての展覧会などを行い、つねに見どころのある美術館である。このエリアには、いまのところ隣にチームラボの「ボーダレス」があるほかは何もないが、アートウィークなどを中心にポップアップ展示が行われることもある。
>>金澤韻連載「中国現代美術館のいま」:中国本土唯一の公立現代美術館の質実剛健な姿勢──「PSA」