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美術鑑賞の達人たちから絵の見方を教わろう。楽しんで学べるアートの指南書BEST5

2010年代後半から数多く刊行されてきた初心者向けのアートの指南書の数々。そのなかから、アートライターとして活動する齋藤久嗣が、実際に読んでみて美術鑑賞力の向上に役立った良書BEST5を、ポイントを押さえながら紹介する。

文=齋藤久嗣

Photo by Ajda ATZ on Unsplash

 絵に向き合ったとき、「凄い」「かわいい」といった形容詞ならその場でなんとか出てきますが、作品から感じ取れたモヤモヤしたイメージをうまく言語化できなくて悔しい思いをしたり、現代アートの展覧会で作品の意味がわからず頭のなかがクエスチョンマークだらけになったり……そんな経験はありませんか? そんな状況を変えてくれるのが、折からの教養ブームに後押しされ、2010年代後半から数多く刊行されてきた初心者向けのアートの指南書の数々。そこで今回、筆者が読んでみて美術鑑賞力の向上に役立った良書BEST5を、ポイントを押さえながら紹介してみたいと思います。一緒に達人から学んでいきましょう。

わからないことは現場で即調べる。レジェンド・アートブロガーのシンプルな教えとは

出典=Amazon.co.jp

 美術館でアート作品と向き合うと、いといろわからない単語に遭遇しますよね。知らない作家だったり、聞いたことのない表現技法だったり。

 例えば、歴史画の展示を見て、タイトルに《ゴリアテの首を持つダヴィデ像》とあったとしましょう。「えっ、ゴリアテ? ダヴィデ? 聞いたことあるような、ないような…….」となってしまい、途端に作品に集中できなくなってしまった……そんな経験はないでしょうか。

 それでも作品はほかにもたくさんあるので、割り切って次の展示室に進んでいくわけですが、そうすると、楽しい鑑賞の思い出のなかに、若干、消化不良気味のモヤモヤとした後味が残ってしまいがちです。そんなとき、『いちばんやさしい美術鑑賞』(ちくま新書)の著者・青い日記帳を主宰するTakさんは「その場でググれ」と本のなかで教えてくれました。

・・・(中略)スマホを取り出して、「ゴリアテの首を持つダヴィデ」と検索すれば、そこに描かれている物語の一部を容易に調べることができます。

 「美術館の中でその場でググる」というワザは、まさに目からウロコのアドバイスでした。いままでは、美術館では「とにかく行儀よくしなくては」という先入観が強く、「美術館は作品を静かに見なければならない場所だ」という思い込みに支配されていた筆者にとっては、意外な盲点だったのです。

(C)Photo AC

 それ以来、展示室に向かったとき、よく知らない画家や未知のキーワードなどに遭遇するたびに、(許可されているようであれば)その場ですぐスマホを取り出して調べてみるようにしていますが、これによって鑑賞体験はより深まったのです。

 じつは同書『いちばんやさしい美術鑑賞』のなかには、10ヶ所以上も「スマホで調べると......」といったくだりが出てきます。今回の記事執筆にあたって、改めて著者のTakさんにその真意を聞いてみました。

知らない絵と向き合う時、すべて知識があればいいですが、そうもいかないですよね。だから、迷惑にならないようにその場でスマホで調べてみましょう、と書きました。とにかく受け身になりがちな美術鑑賞にとって、スマホで調べることは、アクティブラーニング(能動的な学び)への入り口にもなるのです。

 もちろん、展示室内での電子機器類の操作が禁止されている美術館もありますから、スマホを手に取る前に、本当にいま触っていいかどうか確認しておく必要はあります。ですが最近は撮影がOKだったり、自分のスマホやタブレットで音声ガイドを聞いたりできる展覧会が増えてきたように、展示室内でスマホを触っていても問題ない美術館が増えてきています。ぜひ、今度からその場でググってみて、モヤモヤを解消してしまいましょう。

 ちなみに、同書『いちばんやさしい美術鑑賞』ではそれ以外にも「画家の力量を判断するならはまず“手”を見ろ」(P22)「一つの色に注目して展示を見てみると、その色がどんどん目に飛び込んでくる(カラーバス効果)」(P100)など、いますぐできる鑑賞のTipsが満載。絵画や工芸、現代アートなど様々なジャンルから全15作品を掘り下げながら、アート鑑賞のポイントを易しく指南てくれています。

 筆者も発売以来数知れず読み返した、初心者向けの「虎の巻」とも言える定番の入門書です。ぜひ、この道約30年のレジェンド・アートブロガーが編み出した鑑賞法を同書でチェックしてみてください。

構図が見えるようになると、絵画鑑賞がもっと楽しくなる

出典=Amazon.co.jp

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