第5章「石窟の時間」では、1988年に集中的に制作された大小55点の水彩画連作「石窟の時間」をおもに紹介している。鉱物や結晶を思わせる一連の作品は、難波田の地質や地層への興味をうかがわせる。

第6章「晩年の『爆発』へ」は、80年代後半から90年代にかけての、難波田の晩年の作品の紹介となる。とくに93年からの大型の連作「生の記録」は、難波田がパリのオランジュリー美術館でクロード・モネの睡蓮を見たのちに描かれたものだという。本シリーズについて難波田は「自らの人生を描いた」と語っている。線なのか、面なのか、その境界も曖昧なこの平面は、不思議な奥行きを湛えている。

全国の館に収蔵されている難波田の作品は、コレクション展で目にすることも多い。しかし、これほど幅広く各館の所蔵品を集め、その画業を総覧できる展覧会は、非常に重要な機会といえるだろう。ぜひ本展に赴いて、2020年代のいまの批評眼でその価値を見定めてみてほしい。




















