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「難波田龍起」(東京オペラシティ アートギャラリー)開幕レポート。21世紀に再発見する、抽象の向こうの人、もの、景色

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 第5章「石窟の時間」では、1988年に集中的に制作された大小55点の水彩画連作「石窟の時間」をおもに紹介している。鉱物や結晶を思わせる一連の作品は、難波田の地質や地層への興味をうかがわせる。

展示風景より、左が《人影が増えてくる》(1988)東京オペラシティ アートギャラリー蔵

 第6章「晩年の『爆発』へ」は、80年代後半から90年代にかけての、難波田の晩年の作品の紹介となる。とくに93年からの大型の連作「生の記録」は、難波田がパリのオランジュリー美術館でクロード・モネの睡蓮を見たのちに描かれたものだという。本シリーズについて難波田は「自らの人生を描いた」と語っている。線なのか、面なのか、その境界も曖昧なこの平面は、不思議な奥行きを湛えている。

展示風景より、左から《生の記録3》《生の記録3》(ともに1994)東京オペラシティ アートギャラリー蔵

 全国の館に収蔵されている難波田の作品は、コレクション展で目にすることも多い。しかし、これほど幅広く各館の所蔵品を集め、その画業を総覧できる展覧会は、非常に重要な機会といえるだろう。ぜひ本展に赴いて、2020年代のいまの批評眼でその価値を見定めてみてほしい。

展示風景より、《暁》(1991)東京オペラシティ アートギャラリー蔵

編集部