DIC川村記念美術館は「ダウンサイズ&リロケーション」に決定。作品保有数4分の1へ

DIC株式会社は同社運営のDIC川村記念美術館について、「ダウンサイズ&リロケーション」する方針を固めた。

DIC川村記念美術館

 DIC株式会社(以下、DIC)が、運営するDIC川村記念美術館について「ダウンサイズ&リロケーション」させる方針を決定した。

 同社は今年8月、経営上の理由から同館を「ダウンサイズ&リロケーション」あるいは「美術館運営の中止」とする方針を示し、検討を重ねてきた。

 同社リリースによると、「美術館運営を社会的価値と経済的価値の両面から考えた場合、適切な規模と場所で美術館運営を継続することが、ブランド価値向上による事業の発展に資することのみならず、ステークホルダーひいては社会全体に対する好ましい貢献活動であると考えるに至った」としており、「ダウンサイズ&リロケーション」が最終方針となった。

 DICは美術館と美術品をたんなる「有形資産」ではなく、「美術館運営に真摯に携わり続けることによってのみ維持することが可能な、当社のアイデンティ維持と社会全体に向けた貢献活動に必須の無形資産」と再認識したとしている。その背景として、存続を求める会による5万件を超える署名や一般社団法人全国美術館会議有志261名による署名、千葉市近隣美術館連絡会、千葉県博物館協会それぞれによる声明文あるいは千葉県高等学校美術・工芸教員有志一同による美術館の運営に関する嘆願書などがあり、企業イメージの失墜を避けたい考えが見える。

 では「ダウンサイズ&リロケーション」は具体的にどのような規模なのか? ダウンサイズの規模としては、同社のアイデンティティを象徴する作品群の再定義に伴い、同社保有作品数を4分の1程度に縮小させる。売却については、取引の透明性と納得性、恒常的な公共性の確保、美術館運営に携わる関係者への配慮など、全国美術館会議が定める「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」や国際博物館会議(ICOM)が定める「ICOM 職業倫理規程」などの行動指針/倫理規程に十分配慮するとしており、「文化的にきわめて重要な作品群」や「コレクションの中核を成す作品群」については慎重に取り扱うとともに、売却となる場合においても、一般への公開が行われるよう最大限の努力を払うという。継続保有する作品群の大きな方向性を決定し、対象外となった作品の一部については売却は2025年中に着手。これによってDICは少なくとも100億円程度のキャッシュインを目指す。残りの対象外となった作品は、26年以降に段階的に売却する。

 リロケーション先は東京都内で、美術品を一般公開できる場所となる。今後は複数の移転先を検討し、特定の団体の施設を移転候補先として交渉を進め、2025年3月末までに最終合意と正式発表を目指すとしている。

 現在同館はDICの直営だが、今後の運営方法については、DIC単独ではなく公益性が高い団体と連携する。また移転費用は、必要最小限な数億円規模に抑えるとともに、移転後の運営収支については、来館者数の増加と運営コスト低減などにより、現美術館の運営収支から大きく改善させるとしていている。

 なお現・DIC川村記念美術館については、移転の有無に関わらず25年3月 31 日を最終営業日として同年4月1日から休館。休館後の地域住民による庭園や周辺施設の継続的利用等の可能性については、佐倉市と協議するという。

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