第2章「越境する造形」では、ダダイスムの動きのなかで各々の活動を活発化させながらも、やがて結婚し、室内デザインをはじめとした大きな仕事をふたりで手がけるようになるまでをたどる。
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第一次世界大戦後の平和のなかで加速していくダダイスムに共鳴し、トイバーはベルリンを拠点に様々なアーティストと協働。マックス・エルンストやクルト・シュヴィッタースとの仕事を経て、「オブジェ言語」と呼ばれる造形的な語彙を増やしていった。いっぽうのアルプは、ダダのアーティストとして活動しながらも、実用的な応用芸術の教育者としての動きを活発化させる。刺繍作品の制作や装飾デザインの手引書なども手がけるが、同時に絵画表現への興味も失わなかった。
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会場では、トイバーの幾何学的なクッションやパッチワークの衣装などが並び、その表現ジャンルの多様さを知ることができる。また、アルプの絵画への興味を示すような平面作品も多数並ぶ。
1922年に結婚したふたりは、ともに住む場所を求めるようにスイス、パリ、ストラスブールと居を移すが、ストラスブールのコレクター、ホルン兄弟との出会いによって、18世紀の歴史的建築「オーベット」の改築にともなう室内デザインの依頼という大きな仕事が舞い込むことになる。ふたりはこの仕事において、これまで培ってきた空間への造詣や、色彩についての研究成果を遺憾なく発揮した。
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会場に展示された「オービット」のバーや天井のデザインのために用意された数々の資料は見ごたえがある。計画のみに終わった「バーゼルのミュラー=ヴィートマン夫妻邸」のアクソノメトリック図や、自宅兼アトリエのためのモジュール式家具なども展示されており、ふたりがダダという前衛の最中にいながらも、実用的で生活とともにある応用芸術への興味をつねに失わなかったことが物語られている。
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