1915年、アルプがチューリヒで参加した展覧会をトイバーが訪れ、ふたりの交流が始まった。1916年、チューリヒでフーゴ・バルとトリスタン・ツァラを中心に、ダダイスムの活動が始まる。トイバーもアルプもこのダダイスムに参加しつつ、いっぽうでそれぞれの造形的な関心を深めていった。
第1章ではこの時期のトイバーの作品を中心に紹介。平面作品からは構造への興味とともに、トイバーのクラフトへの造詣が生み出したであろう、やわらかで温かみのある色彩にも注目したい。

また、ダダイスムとの関連では、アルプの《トルソ=へそ》(1915)や、トイバーの『鹿王』の人形に注目したい。前者は人間のシルエットを単純化し、人間存在そのものへの思考を喚起するレリーフだ。後者はイタリアの劇作家カルロ・ゴッジによる『鹿王』(1762)の人形劇のためにトイバーがデザインした人形で、各登場人物が幾何学的抽象にもとづいた造形で表現されている。いずれも、第一次世界大戦を境に大きく揺らぐことになった、近代的な人間性に疑義をもつダダ的な視点が宿る。
