• HOME
  • MAGAZINE
  • INSIGHT
  • ミュシャもクリムトもガウディも。美術鑑賞が楽しくなる「世紀末…

ミュシャもクリムトもガウディも。美術鑑賞が楽しくなる「世紀末芸術」の基礎知識

19世紀末頃から20世紀初頭にかけての芸術表現はひとくくりに「世紀末芸術」と呼ばれることが多い。ともすると漠然としたイメージのある「世紀末芸術」について、初心者向けに鑑賞のコツを解説する。

文=齋藤久嗣

フェリックス・ヴァロットン 街頭デモ 1893 出典=ワシントン・ナショナル・ギャラリーウェブサイト(https://www.nga.gov/collection/art-object-page.42211.html)

 2023年は、ミュシャやロートレック、エゴン・シーレ、ガウディなど、世紀末芸術の主役たちを取り上げた大型展が目白押しです。彼らの芸術は、その活躍した時期にちなんで「世紀末美術」と呼ばれることも多いですが、いまひとつピンとこない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、西洋美術における「世紀末芸術」について、鑑賞の手助けとなるような切り口をアート初心者向けにご説明します。

「世紀末芸術」=「世紀末」の空気感を反映した芸術

「世紀末」という言葉から、“終末”を予感させるような得体の知れない恐怖感や不安を連想される方も多いかもしれません。実際、20世紀末を振り返ってみると、長引く不況のなか、“ノストラダムスの大予言”が流行するなど、独特の緊張感に包まれた終末的な雰囲気も感じられました。

 19世紀末の人々も、同じような想いを抱えていたことでしょう。産業革命を経て科学技術や産業経済が急発達するいっぽうで、こうした繁栄が終末とともに破滅へと向かうのではないかという恐れや焦燥感も高まっていきます。人間を阻害する資本主義への反発もあったでしょう。光が強くなれば、陰も濃くなるわけです。

 そこで世紀末の芸術家たちは、こうした同時代の人間の心の内面に焦点をあて、夢と現実が交差したような幻想世界や、退廃的で妖艶な雰囲気の人物像などを描くようになったのです。

純粋美術から商業美術へと広がる裾野

Exhibition Ranking