「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」とは、2000年に初回が開催され、昨年で7回目を数えた、日本を代表する里山型の芸術祭だ。
芸術祭の舞台は、新潟県・越後妻有地域に広がる760km平米の大地。約200点ほどが広大な地域に点在しており、2016年からは四季を通じた企画展が行われている。
この大地の芸術祭が、夏に行うのが「『大地の芸術祭』の里 越後妻有2019夏」だ。
本展では、常時公開されているわけではない作品を含む多数の作品を公開。今回は、ともに東京で大規模個展が開催中のクリスチャン・ボルタンスキーと塩田千春による作品を見ることができる。
クリスチャン・ボルタンスキーは国立新美術館で個展「Lifetime」を、塩田千春は森美術館で個展「塩田千春展:魂がふるえる」を開催中。ともに大きな話題を集めている。
ボルタンスキーが「大地の芸術祭」に参加したのは2000年。2003年にはジャン・カルマンとともに《夏の旅》として廃校となった旧東川小学校全体で作品を発表し、06年にはインスタレーション《最後の教室》として恒久作品となった。
生徒たちの文具などが残り、人間の不在を強く感じさせるこの作品。多数の扇風機と電球が設置された体育館、棺桶のように蛍光管が並ぶ教室、心臓音が響く理科室、真っ黒な肖像画らしきプレートが並ぶ音楽室。
2018年には、段ボールやブリキといった身近な素材でつくったオブジェを使った光と影のインスタレーション《影の劇場》も追加された。本作は、日本におけるボルタンスキーの代表作。国立新美術館とともに、サイトスペシフィックな作品を堪能してほしい。
このボルタンスキーの《最後の教室》からほど近くにあるのが、塩田千春の《家の記憶》だ。
古民家を1軒丸ごと使用したこの作品が登場してのは2009年。塩田は作品制作のために2週間滞在し、地域の人々から民具や書物などを収集。それらを真っ黒な毛糸で家の中に「封印」した。
使用された毛糸の全長はなんと4万4000メートル。玄関から居間、天井まで、あらゆる場所に糸が張り巡らされている。地域の人々の記憶をとどめたこの作品は、《最後の教室》同様、越後妻有という場所と密接に結びついたものだ。
これらに加えて、「『大地の芸術祭』の里 越後妻有2019夏」では河口龍夫の個展も同時に楽しめる。
「関係」を一貫したテーマとして制作を続けてきたアーティスト・河口龍夫は北川フラムとも長い親交があり、「大地の芸術祭」には初回から参加してきた。その企画展「時の羅針盤」が、磯部行久記念 越後妻有清津倉庫美術館で行われている。
本展では、河口の60年代の初期作品から代表作品までを含む、絵画やインスタレーションなど50を超える作品を展示。とくに体育館棟の巨大空間では、地球の自転に影響され、わずかな振り子運動を生じさせる《関係-地上の星座・北斗七星》(2008)や、中空に浮かぶ無数の蓮を携えた船《関係-浮遊する蓮の船》(2007)、枯れたヒマワリを蜜蝋で固定した彫刻作品とも言える《関係-無関係・立ち枯れのひまわり》(1998)など、空間を生かした展示に注目だ。
また、越後妻有里山現代美術館キナーレでは「水あそび博覧会」として、18年に登場したレアンドロ・エルリッヒの《Palimpsest:空の池》で水遊びができるほか、開発好明らが参加し、子供と一緒に楽しめる作品を展示。3年に1度だけではない、越後妻有のアートを堪能してほしい。