建築部門の坂茂は1957年東京生まれ。「紙管」を使った革新的なデザインで建築の世界で新たな地平を切り拓いた、日本を代表する建築家のひとりだ。紙管建築は1995年のルワンダの難民シェルターや阪神・淡路大震災の仮設住宅などで使用。95年にはNGO「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)」も立ち上げ、世界各地で被災地支援活動を継続的に行うなど、「行動する建築家」として高い評価を得ている。2014年には「建築界のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞を受賞。ミュージアム建築としては、ポンピドゥー・センター メスや大分県立美術館、下瀬美術館、豊田市博物館などを手がけている。
建築部門選考委員の三宅理一は、坂について「これまでの建築部門受賞者のなかでも非常にユニークな考え方を持つ」とコメント。イノベーティブなアイデアと社会奉仕という2つの側面を持つ稀有な存在として、高く評価している。
坂茂は受賞者発表記者会見において、自身が尊敬する小澤征爾、三宅一生、フライ・オットーの3人が世界文化賞受賞者であることに言及し、「そんな賞が自分がいただけたことが信じられない。ライフワークである災害支援を通じて、特権階級のための仕事ではなく、世界のための活動を続けていきたい」と語った。