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瀝青と音で構想する未来の冥界。アンドリウス・アルチュニアンの日本初個展「Obol」が開幕

銀座メゾンエルメス ル・フォーラムで、アンドリウス・アルチュニアンの日本初個展「Obol」が開幕した。ビチューメン(瀝青)と音を素材に、未来の冥界を構想する本展をアーティスト、キュレーターの言葉とともにレポートする。

文=王崇橋(編集部)

「Obol」展の展示風景 © Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

 銀座メゾンエルメス ル・フォーラムで、アルメニアとリトアニアにルーツを持つアーティスト/作曲家アンドリウス・アルチュニアンによる日本初個展「Obol」が開幕した。会期は5月31日まで。

 本展は、エルメス財団が、東京・根津にあるオルタナティブ・スペース「The 5th Floor」のディレクター、岩田智哉をゲスト・キュレーターに迎えて開催するもの。第59回ヴェネチア・ビエンナーレのアルメニア・パビリオン代表をはじめ、上海、光州、リヨンの各ビエンナーレにも参加してきたアルチュニアンは、音と時間を主軸に、神話、儀礼、政治的想像力を横断する実践によって国際的な評価を得ている。

 タイトルの「Obol」とは、死者が冥界の川を渡る際の渡し賃として口に含ませる銀貨を指す言葉である。地中海世界の神話に由来するこの習俗について、アルチュニアンは「愛する人をあの世へ送り出すための儀式は、文化を超えて存在している」と語る。本展は9階から始まり、下階へと降りていく構成をとる。鑑賞者は、地上から地下へと移行する身体的体験を通して、冥界へと降りていくかのような感覚へと導かれる。

死者が冥界の川を渡る際の渡し賃をモチーフにした彫刻作品 © Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

 アルチュニアンは、冥界をたんなる死後の空間ではなく、「生きた場所」として構想する。「冥界には行政的なシステムもあれば、経済もあり、さらにはクラブのような文化的空間もある」と述べるように、それはひとつの社会として想像されている。

 8階のインスタレーションでは、冥界へと誘うような日本語と英語のテキストがレーザーによって投影され、一部の文字は鏡面に反射することで初めて読むことができる構造になっている。こうした仕掛けは、反転や二重性というテーマを空間的に体現するものだ。

展示風景より © Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès