第35回世界文化賞にソフィ・カル、坂茂ら決まる【5/5ページ】

 音楽部門の受賞者であるマリア・ジョアン・ピレシュは、現代を代表するピアニストのひとり。1970年にベートーヴェン生誕200周年記念コンクールで優勝。86年にはロンドンのクイーン・エリザベス・ホール、89年にニューヨークのカーネギー・ホールでリサイタル・デビューを果たし、国際的なキャリアをスタートさせた。1999年には、農村出身の子供たちのための合唱団、実験的なコンサート、プロ・アマを問わないアーティストのためのワークショップを展開するベルガイシュ芸術センターをポルトガル東部に設立している。

ポルトガル・ポルトでの演奏会(2024年5月)
© Miguel Ângelo Pereira - Fundação Casa da Música

 また演劇・映像部門の受賞者であるアン・リーは、アメリカ中心に活動する台湾生まれの映画監督。洋の東西を問わず、時代の奔流と向き合う人間を描く芸術性と、多くの観客を引きつける娯楽性を両立させた作品を生み出し、世界的な名声を得ている。男性同士の「愛」を描いた『ブロークバック・マウンテン』(2005)でアカデミー賞監督賞を初受賞。この作品と、日本軍占領下の上海を舞台にしたスパイ映画『ラスト、コーション』(2007)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を2度にわたり受賞した。

ニューヨークの事務所にて(2024年5月)
©The Japan Art Association / The Sankei Shimbun
ブロークバック・マウンテン(2005)
Photo: Kimberly French/Focus Features
Courtesy of River Road Entertainment
Courtesy of Universal Studios Licensing, LLC

 若手芸術家奨励制度の対象団体に選ばれたコムニタス・サリハラ芸術センターは、軍事政権下の1995年に誕生した組織を母体としたもので、2008年にジャカルタにインドネシア初の民間複合文化施設として設立。思想と芸術の自由を守る芸術活動を推進しており、多様性を尊重した芸術的資源、知的資源を育成する活動を展開している。ディレクターのニルワン・デワントは受賞に際し、「インドネシアの芸術における新たな才能を奨励するためのすべての取り組みが、国際社会において自由、民主主義、そして平和を育むという私たちの大きな使命の一環。これらの柱は政治的・経済的な実利主義、あらゆる原理主義、気候災害によっていまなお脅かされている」としつつ、この受賞が大きな意味を持つと喜びを語った。

サリハラ・ジャズ・バズ 2023年『荒地』
演奏者:サンディカラ・アンサンブル、ジェラール・シトゥモラン
Courtesy of Komunitas Salihara Arts Center

 なお11月19日には、東京・元赤坂の明治記念館で授賞式典が開催される。

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