2024.3.15

今週末に行きたい展覧会ベスト13。国立西洋美術館初の現代美術展から横浜トリエンナーレ、木村伊兵衛の没後50年展まで

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

第8回横浜トリエンナーレ展示風景より
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松山智一の日本初となる美術館個展。「雪月花のとき」(弘前れんが倉庫美術館)

 ニューヨークを拠点に活動している現代美術家・松山智一の日本初となる大規模な美術館個展「雪月花のとき」が、3月17日まで弘前れんが倉庫美術館で開催されている。レポートはこちら

 本展は、2009年にニューヨークのギャラリーで開催された松山の初個展から14年を経て、年々活動の幅を広げながら精力的に作品発表を続けるその日本の美術館では初めての個展。総展示面積1200平米を超える弘前れんが倉庫美術館では、松山がコロナ禍を前後する時期に制作した近作と本展で初めて発表される新作を中心に、アーティストとしての進化と深化の過程を紹介している。

会期:2023年10月27日〜2024年3月17日
会場:弘前れんが倉庫美術館
住所:青森県弘前市吉野町2-1
電話番号:0172-32-8950
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:火
料金:一般 1300円 / 大学生・専門学校生 1000円

体験型インスタレーション作品も。「落合陽一『ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒』」(Gallery & Restaurant 舞台裏)

展覧会キービジュアル

 「ArtSticker(アートスティッカー)」を運営する株式会社The Chain Museumによる、東京・虎ノ門の麻布台ヒルズ内のアートスペース「Gallery & Restaurant 舞台裏」。このスペースで開催中の、メディア・アーティスト落合陽一の個展「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」が3月17日に閉幕する。

 会場は一部作品が無料で鑑賞可能なギャラリーエリアと、展示作品である茶室にて「お茶会」が体験できるエリアに分かれる。茶室への入場は、日時指定の「落合流茶会体験チケット」の購入が必要となるため、ArtStickerの展覧会ページより詳細を確認してほしい。

会期:2024年1月13日〜3月17日
会場:Gallery & Restaurant 舞台裏
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ  ガーデンプラザA  B1F
開館時間:11:00〜20:00 
休館日:月(祝日の場合は翌日休業)
料金:無料 ※「落合流茶会体験チケット」は別途日時指定券を購入(一般 2500円)

織田コレクションから100脚の名作椅子が登場。「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」(日本橋髙島屋S.C.本館)

展示風景より、「第2章 デザイン革命 モダニズム」

 東京・日本橋の日本橋髙島屋S.C.本館で、織田コレクションから100脚の名作椅子を紹介する「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」が3月18日まで開催中だ。また、巡回展は大阪髙島屋、ジェイアール名古屋タカシマヤで開催予定。東京会場のレポートはこちら

 本展では、アール・ヌーヴォーやバウハウス、ミッド・センチュリー、イタリアン・モダンまで、20世紀におけるデザインの変遷を、同コレクションから厳選した100脚の名作椅子を通じて俯瞰するものとなっている。ほかにも、食器、インテリア製品、キッチン用品、家電製品、事務用機器などもあわせて展示。デザインと生活の関係性を、時代の優品の数々から解き明かすことができるだろう。

東京会場
会期:2024年2月29日~3月18日
会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール
住所:東京都中央区日本橋2-4-1
開館時間:10:30〜19:30(最終日〜18:00)※入場は閉場の30分前まで 
料金:一般 1200円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下無料
大阪会場
会期:2024年3月27日〜4月14日
会場:大阪髙島屋 7階グランドホール
名古屋会場
会期:2024年4月18日〜5月5日
会場:ジェイアール名古屋タカシマヤ 10階特設会場

国立西洋美術館初の現代美術展示。「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」(国立西洋美術館)

展示風景より、オーギュスト・ロダン《青銅時代》(1877)と小田原のどかによる五輪塔

 開館65周年を迎えた東京・上野の国立西洋美術館で「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」が開催中だ。会期は5月12日まで。レポートはこちら

 国立西洋美術館と言えば、中世から20世紀前半までの西洋美術のみを収蔵・保存・展示する施設であり、西洋美術全般を対象とする唯一の国立美術館だ。言い換えれば、すでに死者となっている異邦の芸術家らが残した産物が集結する場であるとも言える。本展は、そのような場所には存在しない「現代美術」を生業とする作家らを初めて大々的に招き入れるものとなっている。

 参加作家は、飯山由貴、梅津庸一、遠藤麻衣、小沢剛、小田原のどか、坂本夏子、杉戸洋、鷹野隆大、竹村京、田中功起、辰野登恵子、エレナ・トゥタッチコワ、内藤礼、中林忠良、長島有里枝、パープルーム(梅津庸一+安藤裕美+續橋仁子+星川あさこ+わきもとさき)、布施琳太郎、松浦寿夫、ミヤギフトシ、ユアサエボシ、弓指寛治。

会期:2024年3月12日〜5月12日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9:30〜17:30(金土〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(3月25日、4月29日、4月30日、5月6日は開館)、5月7日
料金:一般 2000円 / 大学生 1300円 / 高校生 1000円 / 中学生以下無料

色やかたちから人間の営みを読み解く。「歴博色尽くし」(国立歴史民俗博物館)

展示風景より、《平等院鳳凰堂斗栱彩色模型》 国立歴史民俗博物館蔵

 千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で、「色」をテーマとした館蔵資料展「歴博色尽くし~いろ・つや・かたちのアンソロジィ~」が開幕した。会期は5月6日まで。レポートはこちら

 本展は、建造物彩色、染織工芸、浮世絵版画、漆工芸、考古遺物、隕鉄剣など、同館の多彩な館蔵資料を紹介し、その「いろ・つや・かたち」が示す人間の営みについて全6章立てで紹介するものだ。副題に「アンソロジィ(詞華集)」とあるように、各テーマごとにその分野の研究員が出展品やその紹介の切り口を提示していること、そして同館コレクションのなかでもあまり表に出ることがなかった資料をメインに構成している点が、本展の見どころとも言えるだろう。

会期:2024年3月12日~5月6日
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A
住所:千葉県佐倉市城内町 117
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、4月29日、5月6日は開館)
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生以下 無料

花の季節に花の日本画を見る。特別展「花・flower・華」(山種美術館)

展示風景より、荒木十畝《四季花鳥》(1917) 山種美術館

 東京・広尾の山種美術館で、特別展「花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―」が開催されている。会期は5月6日まで。レポートはこちら

 本展は、同館において恒例となっている、花をテーマにした日本画の展覧会。今回は、田能村直入、横山大観、菱田春草、奥村土牛、福田平八郎といった画家たちによる、花々を描いた作品を集めた展示構成となっている。

会期:2024年3月9日~5月6日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜17:00 
休館日:月(4月29日、5月6日は開館) 
料金:一般 1400円 / 大学・高校生 500円 / 中学生以下無料

近世の御所や宮家を飾った品々を堪能。皇居三の丸尚蔵館 開館記念展「皇室のみやび―受け継ぐ美―」第3期(皇居三の丸尚蔵館)

展示風景より

 昨年11月にリニュアルオープンした皇居三の丸尚蔵館で4期に分けて開催中の開館記念展「皇室のみやび─受け継ぐ美─」。その第3期「近世の御所を飾った品々」が3月12日に開幕した。レポートはこちら

 第3期では、近世までに京都御所や宮家を飾っていた品々を観覧する。例えば、桃山時代(16世紀)の《蔦細道蒔絵文台・硯箱(御在来)》や簾をはめた金屏風の両面に糸桜を描いた狩野常信の《糸桜簾屏風》(江戸時代〈17世紀〉)、貴族で歌人の藤原定家が書写した国宝《更級日記》(鎌倉時代〈13世紀〉)など、「御在来」と称される京都御所に伝えられた作品に、桃山時代に創設された八条宮家を前身とする旧桂宮家に伝来した伝狩野永徳《源氏物語図屏風》(桃山時代〈16〜17世紀〉)などの書画や工芸、楽器が紹介されている。

会期:2024年3月12日〜5月12日 ※会期中、一部展示替えあり
会場:皇居三の丸尚蔵館
住所:東京都千代田区千代田1-8 皇居東御苑内
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月(ただし祝日または休日の場合は開館し、翌平日休館)
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生以下、18歳未満、70歳以上は無料
※出品作品はすべて国(皇居三の丸尚蔵館収蔵)の作品

人の営みとその周りを取り巻く存在に目を向ける。「VOCA展2024 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(上野の森美術館)

大東忍 風景の拍子 2023 麻布・パネルに木炭 撮影=平舘平

 東京都の上野の森美術館で、平面美術の領域で国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に、1994年より毎年開催されている美術展「VOCA展」がスタートした。会期は3月30日まで。レポートはこちら

 31回目の開催となる今年は、グランプリの「VOCA賞」を愛知県出身の大東忍(秋田県在住)が受賞。「VOCA奨励賞」には、上原沙也加と片山真理が、「VOCA佳作賞」には佐々瞬と笹岡由梨子らの作品が選出された。

 選考委員を務めたのは、植松由佳(委員長 / 国立国際美術館学芸課長)、荒木夏実(東京藝術大学准教授)、川浪千鶴(インディペンデント・キュレーター)、丹羽晴美(東京都現代美術館事業企画課長)、前山裕司(新潟市美術館特任館長)。

会期:2024年3月14日~30日
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2  
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館30分前まで 
休館日:会期中無休

横浜美術館のリニューアルオープンにも注目。第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」(横浜美術館ほか)

 アーティスティック・ディレクターに北京を拠点に活躍するリウ・ディン(劉鼎)とキャロル・インホワ・ルー (盧迎華)を迎え、第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」がスタートした。会期は6月9日まで。

 本展は94組の多様な国籍のアーティストが参加しているとともに、日本で初めて紹介されるのはうち30組となる。会場となっている横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKOで展示されるほか、一部は、3会場の建物の外側や街なか、横浜美術館の無料エリアなどでも展開されている。2021年より長期休館していた横浜美術館がリニューアルオープンした点にも注目だ。

会期:2024年3月15日~ 6月9日
会場:横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO
開館時間:10:00~18:00
休館日:木(ただし4月4日、5月2日、6月6日は開館) 

アートの入り口「アーバン・アート」に出会う。「MUCA(ムカ)展 ICONS of Urban Art ~バンクシーからカウズまで~」(森アーツセンターギャラリー)

展示風景より、手前はバンクシー《Ariel》(2017)

 ドイツ・ミュンヘンの中心部に位置するアーバン・アート作品に特化した美術館「Museum of Urban and Contemporary Art (MUCA)」。そのコレクションを紹介する展覧会が東京・六本木の森アーツセンターギャラリーでスタートした。会期は6月2日まで。レポートはこちら

 本展では、バンクシーにKAWS、インベーダー、JR、ヴィルズ、シェパード・フェアリー、バリー・マッギー、スウーン、オス・ジェメオス、リチャード・ハンブルトンといった、同コレクションのなかでもとくに有名なアーティストら10名の作品や活動を取り上げている。

会期:2024年3月15日~6月2日
会場:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6丁目10­1 六本木ヒルズ森タワー 52階
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:10:00~19:00(金土祝、祝前、GW[4月27日~5月6日]~20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:一般 2200円 / 高大生 1500円 / 小中生 800円 ※未就学児無料

日本の写真史に大きな足跡を残した木村伊兵衛の回顧展。「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」(東京都写真美術館)

板塀 追分 秋田 1953

 東京・恵比寿の東京都写真美術館で、日本近代写真の巨匠・木村伊兵衛(1901〜1974)の没後50年展「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」が、3月16日~5月12日の会期で開催される。

 木村は、1920年代に実用化が始まったばかりの小型カメラに写真表現の可能性をいち早く見出し、それを駆使した文芸諸家のポートレート、あるいは東京下町の日常の場面を素早く切り取るスナップショットで名声を得た。33年に開催された「ライカによる文芸家肖像写真展」では、従来の型にはまった肖像写真ではなく、被写体の一瞬の表情の変化をとらえる独自のスタイルを確立。また、36年には初めて沖縄を訪れて生活感にあふれた日常を記録するなど、「ライカの名手」としてのその名を馳せた。ほかにも、広告宣伝写真や歌舞伎などの舞台写真、カラーフィルムによる滞欧作品、秋田の農村をテーマにするシリーズなど、様々な被写体をとらえた傑作を数多く生み出してきた。

 本展は、日本の写真史に大きな足跡を残した木村の功績を回顧するものとなる。会場では、これらの作品のほか、近年発見されたニコンサロンでの木村伊兵衛生前最後の個展「中国の旅」(1972〜73)の展示プリントも特別に公開される。

会期:2024年3月16日~5月12日
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00〜18:00(木金〜20:00) ※⼊館は閉館時間の30分前まで
休館日:月(ただし、4⽉29⽇、5⽉6⽇は開館)、5⽉7⽇

小野忠重の作品を通じて版画運動の諸相を探る。「版画の青春 小野忠重と版画運動」(町田市立国際版画美術館)

 東京都の町田市立国際版画美術館で、「版画の青春 小野忠重と版画運動」が開催される。会期は3月16日〜5月19日。

 昭和初期にあたる1930年代の東京は関東大震災から復興し、新しい景観と映画やカフェなどの娯楽文化が流行する近代都市へと変貌を遂げていた。そのいっぽうで、経済や文化面などへの国家の統制が強化され、戦時体制へと歩みが進んだ時代でもあった。そのような時代の最中、小野忠重や武藤六郎ら20代はじめの青年たちが「新版画集団」を結成し、「版画の大衆化」を掲げて版画運動を開始。さらに、「造型版画協会」を結成して版画運動を継続・発展した。

 本展では、小野忠重の旧蔵品を中心とした約300点の作品によって、これらのグループによる版画運動の諸相を探るものとなる。また、激動の1930〜40年代という時代に版画に熱中した青年たちが、いかにこの時代を超えようとしたか。いわばその「青春期」を振り返る機会となっている。

会期:2024年3月16日〜5月19日 ※4月23日に約10点の展示替えあり
会場:町田市立国際版画美術館
住所:東京都町田市原町田4-28-1
電話番号:042-726-2771
開館時間:10:00~17:00(土日祝〜17:30)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし9月18日は開館、翌日休館) 
料金:一般 900円 / 大学・高校生 450円 / 中学生以下無料

日本初公開作品も。「スーラージュと森田子龍」(兵庫県立美術館)

森田子龍(左)とスーラージュ(中央) 1963年、パリにて

 コロナ禍によって2度延期された「スーラージュと森田子龍」が兵庫県立美術館で開催される。会期は3月16日〜5月19日。

 本展は、フランスのアヴェロン県と兵庫県との20年をこえる友好提携を記念して行われるもので、1950年代から直接交流のあった画家のピエール・スーラージュ(1919〜2022)と書家の森田子龍(1912〜1998)の2人展だ。

 スーラージュはフランス南西部アヴェロン県ロデーズ生まれ。画業の最初期から晩年に至るまで、一貫して抽象を追究した。2014年、故郷ロデーズに、その名を冠した美術館が開館。生誕100年を記念し、2019年12月から20年3月にかけて、ルーヴル美術館で個展が開催されている。生前にルーヴルで個展が開かれたのは、ピカソ、シャガールに次いで3人目だ。本展において、スーラージュ美術館から出品される17点のうち16点は日本初公開。もう1点は、1951年に日本で初めて展示されたスーラージュの作品で、約70年振りの来日となる。

会期:2024年3月16日〜5月19日
会場:兵庫県立美術館
住所:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:月(ただし4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
料金:一般 1600円 / 大学生 1000円 / 高校生以下無料 / 70歳以上 800円