東京・日本橋の日本橋髙島屋S.C.本館で、織田コレクションから100脚の名作椅子を紹介する「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」がスタートした。会期は3月18日まで。
織田コレクションとは、椅子研究家・織田憲嗣(おだのりつぐ)が長年かけて収集・研究してきた、20世紀の優れたデザインの家具と日用品のコレクション。その種類は、北欧を中心とした椅子やテーブルから照明、食器やカトラリー、木製のおもちゃまでと多岐にわたる。また、写真や図面、文献などの資料を含め系統立てて集積されており、近代デザイン史の変遷を俯瞰できる学術的にも極めて貴重な資料として世界的にも高い評価を得ている。
本展は、アール・ヌーヴォーやバウハウス、ミッド・センチュリー、イタリアン・モダンまで、20世紀におけるデザインの変遷を、同コレクションから厳選した100脚の名作椅子を通じて俯瞰するものとなる。
会場は大きく分けて5つのエリアで構成されている。「第1章 20世紀の始まり アール・ヌーヴォー」では、産業革命以降のものづくり精神に大きな影響を与えたアーツ・アンド・クラフツ運動や新芸術の動向をうかがうことができるプロダクトが紹介されている。
「第2章 デザイン革命 モダニズム」では、第一次世界大戦の影響を色濃く反映する椅子や、1919年にドイツ・ヴァイマールに設立されたバウハウスにまつわるものを中心に展示されている。従来木材でつくられてきた椅子にかわり登場するのはスチールパイプ製の椅子だ。当時はパイプを曲げる技術に乏しかったため、パイプのなかに熱した鉛を流し入れて曲げるといった困難な方法で製作されていたのだという。
「第3章 デザイン黄金時代 ミッド・センチュリー」では、第二次世界大戦下で花開く、多様なデザインの名品が紹介されている。この時期の特徴を挙げるとするならば、座面の3次元化や新たな素材で製作されたプロダクトの数々だろう。
また、ミッド・センチュリー期に世界中のデザイナーがチャレンジしたという3次元曲面の技術は、図らずもチャールズ・イームズ / レイ・イームズによる米軍戦闘機のパイロットシートの技術が生かされているのだという。
60年代に突入すると、未来的な素材を活用したものや、ポップ・アートやロック・ミュージックといったカウンターカルチャーと融合した独自のプロダクトが、とくにイタリアのデザインから見られるようになる。「第4章 斬新なデザイン ポストモダンへ」では、そのイタリアらしいユニークで陽気な様相を味わうことができるだろう。
また、会場出口付近には名作椅子に実際に座ることができるスペースも用意されている。本物のデザインを見て、歴史を知って、実際に座り体感する。この三拍子揃った体験ができるのも、同コレクションあってのことだろう。
本展の開幕に際し、織田は会場構成の意図と、自身の展望について次のように語る。「昨年の同時期にもこの会場で北欧デザイン展を実施し、準備期間はタイトであったが本展も開催することができた。今回は20世紀における様々な生活デザインの名品を展示しており、大人から子供まで楽しめる内容となっている。現在は北海道の旭川に自邸を構えており、コレクションは東川町に寄贈している。ここでデザインミュージアムをつくるという夢をずっと持ち続けている」。
本展は大阪髙島屋、ジェイアール名古屋タカシマヤにも巡回予定のため、この機会にぜひ足を運んでほしい。なお、今年6月には同コレクションによる「ポール・ケアホルム展」も東京のパナソニック汐留美術館で予定されているため、こちらも要チェックだ。