1837年の創業以来、ラグジュアリージュエラーとして世界中で愛されてきたティファニー。その日本との絆は創業時にまで遡り、エドワード・C・ムーア、ルイス・コンフォート・ティファニー、エルサ・ペレッティといったブランドを代表するデザイナーの多くが、日本芸術に影響を受けてきたという。そうした歴史を踏まえると、本展「『ティファニー ワンダー』技と創造の187年」(会場:TOKYO NODE、会期:4月12日〜6月23日)が日本で開催されるのはごく自然の流れと言えるだろう。
ティファニーの社長兼CEOのアンソニー・ルドリュは本展開幕にあたり、「この展覧会をずっと構想していた。ティファニーと日本の絆をフルに説明し、日本であることの重要性を際立たせたものだ」と語っている。
また、同社コミュニケーションズ&インダストリアル プロダクト部門エグゼクティブ バイス プレジデントのアレクサンドル・アルノーは本展のテーマについて、「ここで言う『ワンダー』とは、素晴らしいものを見たときの感動。つねに前向きなものを発明したいという我々の精神を東京で伝えたい。素晴らしい技術に支えられたワンダーで、皆さまを驚かさせたいと思う」と自信を覗かせた。
「ティファニー ワンダー」の会場である虎ノ門ヒルズステーションタワーは、五番街ニューヨーク本店 ザ ランドマークの再構築にも携わった建築事務所「OMA」が手がけており、10のルームで構成。様々なルームを通じて、ティファニーの200年近いストーリーと卓越した作品を堪能できる。ティファニーをいちから知るにはうってつけの展覧会だ。
会場に並ぶのは、エナメル、エメラルド、ダイヤモンド、ピンクサファイヤが散りばめられたジョージ・ポールディング・ファーンハムが製作した希少な蘭のブローチ、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤがセットされたジャン・シュランバージェのプルーム ネックレスなど、未公開作品を含む傑作の数々だ。
1つめのルームは、TOKYO NODEの特徴である、没入型の体験が可能なドーム型のギャラリー。ここではティファニーのジュエリーをモチーフにした映像が部屋いっぱいに投影され、これから続くティファニーワールドへと誘う。
ルーム3と4は、ティファニーを支えてきたデザイナーたちにフォーカスしたもの。ルイス・コンフォート・ティファニーによるマスターピースである「メドゥーサペンダント」は、この展覧会のために初めてニューヨークから持ち出された。またジャン・シュランバージェやパロマ・ピカソなど、ティファニーを支えてきた卓越したデザイナーたちが共演するセクションだ。
ルーム5は、日本との関係性にフォーカスした本展のコアと言える。アレクサンドル・アルノーもこのセクションをとくに重視しているという。和紙を思わせる柔らかな光があふれた空間の中に、藤やトンボをはじめ、日本からインスピレーションを受けた作品が並ぶ。
ティファニーはそのユニークなディスプレイ・デザインでも知られている。本展では、そのアーカイヴが一堂に並ぶ空間も設けられた。歌川広重からインスパイアされたというこのエキシビションのための新作にも注目だ。
ティファニーを語るうえで欠かせない名作映画といえば、『ティファニーで朝食を』(監督:ブレイク・エドワーズ、1961)。会場には映画館のようなルームが設けられ、驚きを与えてくれる。同作の映像が流れるなかで、オードリー・ヘップバーンが実際に着用したドレスや台本、そしてオスカー像も見ることができる。映画ファンも必見のパートだろう。
展示は、ティファニーが制作した様々なスポーツのトロフィーや、レディー・ガガ、ビヨンセといったスーパースターたちが着用したジュエリーが並ぶ祝祭的な空間、「ダイアモンド・キング」と称されるティファニーならではのダイアにフォーカスした部屋へと続く。
そして最後を飾るのは、ジャン・シュランバージェの代表作である「バード オン ア ロック ブローチ」からインスピレーションを得て、新しいデザインに生まれ変わった128.54 カラットの「ザ ティファニー ダイヤモンド」だ。
ティファニーというジュエラーの職人技と創造性、伝統と現代性のストーリーを存分に堪能できるこの機会。ティファニーにとって約17年ぶりとなるエキシビションだけに、力のこもった内容となっている。