平⾯美術の領域で国際的にも通⽤するような将来性のある若い作家の⽀援を⽬的に1994年より毎年開催している「VOCA展」。その領域から40歳以下の作家を、全国のアートの現場に精通した美術館学芸員、研究者、美術評論家らが推薦するもので、過去の出展者には奈良美智、村上隆など現在日本のアートシーンを牽引する現代美術家たちや、Nerhol(田中義久・飯田竜太)、玉山拓郎、水戸部七絵、川内理香子など新進気鋭の作家たちが名を連ねている。
今年で31回目となる「VOCA展2024」のグランプリ「VOCA賞」を受賞したのは愛知県出身の大東忍(秋田県在住)。ひと気のない街や辺境地を歩き、夜の暗がりのなかで踊り、その風景を描くという実践を繰り返してきた作家だ。今回の受賞作となった《風景の拍子》は、秋田の新屋地域の風景を題材としたもの。木炭で丹念に描かれた黒白の画面に見られる深い奥行きと広がり、そしてありふれた風景のなかに記憶や痕跡、時間といった見えないものを見せる力がある、という点が高く評価された。推薦者は石倉敏明(秋田公立美術大学准教授 人類学者)。
また、「VOCA奨励賞」には上原沙也加の《幽霊たちの庭》と片山真理の「red shoes」シリーズが、「VOCA佳作賞」には佐々瞬による《そこに暮らす人々は自らの歴史を記した》と笹岡由梨子による《Animale /ベルリンのマーケットで働くクマ》が選出された。
今回選考委員を務めたのは、植松由佳(委員長 / 国立国際美術館学芸課長)、荒木夏実(東京藝術大学准教授)、川浪千鶴(インディペンデント・キュレーター)、丹羽晴美(東京都現代美術館事業企画課長)、前山裕司(新潟市美術館特任館長)。
なお、これらの作品を一堂に展示する「VOCA展2024」が、2024年3月14日〜30日に東京・上野の上野の森美術館で開催される。現代における平面美術の有り様を目の当たりにすることができるだろう。