物に語らせる肖像画
──画面の隅々に散りばめられた品々が印象的です。作品の制作過程について教えてください。
バス いつもは下絵を描くのですが、《All you ever wanted to know about 5B》では描かずに始めたんです。そのぶん、普段より時間がかかったのかもしれません。それでも構図だけは最初から頭にありました。前景・中景・背景を重ねた、デイヴィッド・ホックニー風の平面的な画面です。そこに並べる物を集めるために、ちょっとした「爆買い」もしましたね。並んだ品々から主人公の趣味を読み解くのも、見る人にとっての楽しみになると思います。彼は愛国者でありながら、ハロウィン好き。砂漠のような場所に住んでいそうなのに、ソリ遊びもする人なんです。

──描かれた品々から、彼の人となりが浮かび上がってきますね。まずキャラクターを決めてから、周りのモチーフを選んでいくのでしょうか?
バス 本作では、まず描き込みたい物をリストアップするところからスタートしました。日本で発表することは決まっていたので、ヤードセールは少し見慣れない光景かもしれないと考え、男性にはあえて小さな星条旗を持たせました。しかし、途中までは光も影もない平らな色面だけで、どうにも物足りない。そこでさらに2週間かけて、木の影や木漏れ日を描き加えました。この木漏れ日があって初めて、絵が完成したと感じています。
──綿密なリサーチも制作の特徴ですね。その過程も楽しんでいますか?
バス 実際に描くより楽しいときもあるくらいです。自分がワクワクしていなければ、ほかの誰かをワクワクさせることなんてできませんから。ときには、まったく必要のない、でも自分にとっては大事な細部にまでこだわってしまいます。例えば綿菓子売りの男性の制服は、1970年代に実在した球場のものをもとにしました。誰も気づかないし、気づく必要もない。それでも描いていると、そんなことばかり頭に浮かんでしまうんですよ。

──原点についても聞かせてください。はじめから画家を志していたのでしょうか?
バス 美術系の高校に通っていた頃は、どちらかといえば写真少年でした。ところが授業をサボりすぎて退学になり、暗室が使えなくなってしまった。暗室の代わりに台所のテーブルで、アイデアを絵に描きはじめました。物語が膨らむほど、写真より絵のほうが向いていると感じるようになり、いまではドローイングも含め、描くこと自体が面白くてしかたありません。大学は性に合わず、1学期でやめてしまいました。だから、きちんと美術を学んだことはないんです。そのぶん、自分に飽きないよう新しい線を探しつづけています。



















