万博から横浜へ。「null²」の新たな展開
2025年の大阪・関西万博で、大きな注目を集めたパビリオンのひとつが、メディアアーティスト・落合陽一がプロデュースした「null²(ヌルヌル)」だ。その体験を継承する常設ミュージアムシアター「null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)」が、10月14日に横浜・みなとみらいのランドマークプラザ5階にオープンする。
大阪・関西万博の「null²」は、仏教哲学の「空」と計算機科学の「null」を重ね合わせた概念を基盤に、特殊ミラー膜やLED、ロボティクスなどを組み合わせた体験型インスタレーションとして制作された。落合が提唱する「計算機自然(デジタルネイチャー)」の世界観を具現化し、会期中にはのべ約60万人が来場した。

万博の閉幕後には、パビリオンのレガシーを未来につなぐためのクラウドファンディング「ぬるぬるのお引越」が実施され、1万5821人から約2億8150万円の支援を集めた。今回の横浜での常設化は、そうした万博のレガシーを継承するプロジェクトでもある。
ただし、「null²ⁿ」は大阪のパビリオンをそのまま移設したものではない。万博での体験を核としながら、新たな空間構成や演出を加え、独立したミュージアムシアターとして再構成されたものだ。

記者発表に参加した落合は、今回の施設について「大阪万博ではやりきれなかった作品要素がある」と説明。万博では物理的な展示物が比較的少なかったのに対し、横浜では様々な実物の道具や装置を取り入れ、人間が道具をつくり、現在の計算機とともに生きるに至った過程をたどれる構成にしたという。
その背景にあるのは、落合が長年研究してきたコンピューターと道具の関係だ。「人間が道具を使い始めてから約300万年。AIが出てきて、人間は道具を自分でつくることから卒業しそうになっている。人間以外のものが発明し、人間以外の工場設備がそれをつくるようになれば、私たちの考え方も、自然との付き合い方も、人と人とのコミュニケーションも大きく変わっていくのではないかと思います」(落合)。
落合によれば、そうした変化のなかで、人間の身体や記号、知性とは何かという問いを、難解な理論としてではなく、体験を通して理解し、芸術的に感じられる施設を目指したという。「null²ⁿ」の名称にある「NEXUS」は、結節点を意味する。落合は「ここに人が集い、何かのハブになるような場所になってほしい」と語り、たんなる展示施設を超えた場としての発展にも期待を寄せる。

































