売り込むのは、一瞬の輝き
──今回の主役は、どこか冴えないセールスマンたちです。彼らに目を向けたのはなぜでしょう?
バス ひとつのシリーズを長く続けると、キャラクターに飽きてしまうんです。それで次は、観光客とは逆の立場、観光で生計を立てる側のセールスマンを描くことにしました。もともと私は、誰からも気に留められない人物に惹かれます。観光客が地元の人に向けるまなざしも、まさにそうですよね。セールスマンが輝けるのは、10秒後にはこちらの顔など忘れているであろう相手に、自分を印象づけるほんの一瞬だけ。そこで浮かんだのが「Time to shine(輝くとき)」という言葉でした。
例えば、本展最大の作品《All you ever wanted to know about 5B》(2026)の「5B」は、ヤードセール(主に北米において個人の自宅の庭先やガレージなどで行われる不用品のフリーマーケット)で物を売る男性の部屋番号です。口をきいたこともない隣人を知る機会なんて、ヤードセールくらいでしょう。人となりは、残す物より手放す物に表れる。並んだ品々は、いわば売り手の自画像です。商売は下手でも、彼は彼なりに輝いているんです。

──一見のどかなアメリカの風景ですが、よく見るとどこか皮肉が効いています。本シリーズは、アメリカ社会への批評でもあるのでしょうか?
バス もちろんです。野球場の綿菓子売りやヤードセールなど、今回描いた光景の多くはアメリカ特有のもので、ほかの国ではほとんど見かけません。暮らしていると苛立つことも多いアメリカですが、だからこそ私にとっては興味の尽きない場所なんです。奇妙な習慣がたくさんあって、ほとんどシュールと言っていいくらい。政治には踏み込まずに、自分たちのおかしさを世界に見せるのが好きなんです。それに、移民一世の子供として、アメリカという国の奇妙さに戸惑う両親の姿を見てきたことも大きいと思います。キューバから来た私の両親にも、ヤードセールはさっぱり理解できないものでしたから。



















