ヴェネチアに潜むユーモア
──今年のヴェネチア・ビエンナーレ会期中、カ・ペーザロ国際近代美術館で発表された「The Visitors」(2026)は、観光地を舞台にしたシリーズとして話題を呼びました。反響はいかがでしたか?
ヘルナン・バス(以下、バス) いちばん期待していたのは、作品に込めたユーモアを汲み取ってもらうこと、そして題材の重さばかりを背負い込まずに見てもらうことでした。実際、多くの方がそのおかしみに気づいてくれたのは嬉しかったですね。私は観光を厳しく批判しようとしているわけではありません。出発点はむしろ、旅先となる土地そのものへの興味にあります。それに、作品全般について言えることですが、私はいつもどこかにユーモアを忍ばせているんです。

──重いテーマにもユーモアで向き合うことが多いですね。とはいえ、世界中から人が押し寄せる街で「訪問者」を描くことに、ためらいはありませんでしたか?
バス 観光客のせいで街がめちゃくちゃになっていく、という展覧会をやるなら、ヴェネチアをおいてほかにないでしょう。制作中は3ヶ月近くその街に暮らしました。それだけいると、道にも詳しくなるし、地元の知り合いもできて、自分も現地の人間になったような気がしてくる。けれど同時に、自分はヴェネチアの人間ではないという事実も自覚しなければなりません。「訪問者」をテーマにした展覧会を、観光客であふれる街の訪問者たちが見に来る。あの場所で作品を手がけること自体に、そもそも皮肉が内包されていたんです。
──「The Visitors」シリーズから、今回の個展「TIME TO SHINE! (the salesmen)」に向けて、どんな変化がありましたか?
バス 自分の描き方に対して、これまでになく迷いがなくなったと感じています。「The Visitors」を通じて、絵画について、そしてキャラクターをどう扱うべきかについて、本当に多くを学びました。おそらく、自分にとってもっとも重要なシリーズです。20年あまり人物ばかり描いてきたのに、ネタが尽きるどころか、描きたい人物がいまほど次々と浮かぶ時期はありません。私が自信をつけてきたのと同じように、登場人物たちも少しずつ堂々としてきた気がしますね。






























