戦争体験の哀しみに風刺を込めて。版画家、彫刻家の浜田知明が100歳で逝去

過酷な戦争経験を原点に、社会や人間、自分自身を鋭くユーモラスに風刺した作品を手がけた浜田知明が7月17日、逝去した。

「戦後70年記念 浜田知明のすべて」展(熊本県立美術館、2015)での展示風景 画像提供=熊本県立美術館

 第2次世界大戦での軍隊体験を原点に版画作品を制作。ウフィッツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)で日本人として初めて個展が開催されるなど、国内のみならず世界的に高く評価された浜田知明が7月17日、老衰のため逝去した。享年100歳。

 浜田は1917年熊本県生まれ。飛び級で東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学し、卒業と同時に入隊。中国大陸で軍務についた。「戦争の残酷さや悲惨さ、軍隊の野蛮さや愚劣さを描きたい」という強い意志を抱いた浜田は、過酷な従軍生活を経て終戦後、制作を再開する。

 50年には、32歳で駒井哲郎や関野凖一郎らと交流しながら本格的に銅版画制作をスタート、自殺しようとする骸骨姿の兵士を描いた「初年兵哀歌」シリーズなどの代表作を発表した。

 56年、「初年兵哀歌」シリーズの「歩哨」が「第4回 白と黒国際版画展」(スイス)で次賞を受賞。79年には、アルベルティーナ国立美術館(オーストリア)で個展を開催し、89年にはフランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受章するなど、国際的な活躍も目立った。また80年代以降は彫刻も発表。一貫して戦争経験を糧に、銅版画、彫刻などを通して社会や人間、自分自身を鋭いユーモアを持って表現した。

 葬儀・告別式は19日正午から豊住葬祭(熊本市中央区)で行われる。
 

編集部

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