
花には人間の何が映し出されるのか。中尾英恵評「第13回 shiseido art egg:見えない庭 今村文」展
「第13回 shiseido art egg」の入選者のひとり、今村文の個展が開催された。今村は、花や植物を主要なモチーフとし、古代エジプトでも使われていた「エンコスティック」という蜜蝋を用いた技法の絵画と、水彩画で描いた植物を切り絵として用いる作品を制作してきた。生命が循環する自然界の一部としての人間を想起させた本展を、小山市立車屋美術館学芸員の中尾英恵が読み解く。

「第13回 shiseido art egg」の入選者のひとり、今村文の個展が開催された。今村は、花や植物を主要なモチーフとし、古代エジプトでも使われていた「エンコスティック」という蜜蝋を用いた技法の絵画と、水彩画で描いた植物を切り絵として用いる作品を制作してきた。生命が循環する自然界の一部としての人間を想起させた本展を、小山市立車屋美術館学芸員の中尾英恵が読み解く。

現在、東京国立近代美術館では、洋画家・丸木俊による裸婦像《解放され行く人間性》(1947)に着想を得てセクシャリティを問う展覧会「解放され行く人間性 女性アーティストによる作品を中心に」を開催中だ。時代とともに様々な人間性が徐々に「解放され行く」流れをとらえた本展を、美術批評家の菅原伸也がレビューする。

反政府活動の容疑で約7年刑務所に収監され、囚われた独房でアート作品を制作し続けたという特異な経験を持つミャンマーの現代美術を代表するアーティスト、ティン・リン。その日本初個展が、銀座メディカルビル1階にあるShinwa ARTEXのギャラリーで開催された。独房内で制作された作品をはじめ、ミャンマーのジェンダー問題をテーマにした作品などが一堂に会した本展を、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授・毛利嘉孝がレビューする。

1995年生まれの尾焼津早織は、自らの造語である「ハイパーフレーミング・コミック」という手法を用いた新たな表現を模索している。ページというフレームがない自由なコマ構成による静止画のマンガと、カメラワークを組み合わせた映像作品は、マンガのシステムを問い直し、「読む」という体験の新たな可能性を引き出そうとする。3作品を展示した個展を、視覚文化評論家の塚田優が論じる。

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。その中から、7月に公開された11本をピックアップしてお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

1960〜70年代のイタリアで活動した女性アーティスト、ケティ・ラ・ロッカ。ヴェネチア・ビエンナーレ開催中のイタリアでは、トリノにて近年国際的に再評価される彼女の個展が開催された。ヴェネチア・ビエンナーレで発表された代表作を中心とした本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

地域の人々の参加や協働を軸とした表現の課題と可能性とは? 地域に根ざした実験的な活動を続けてきた3組の作家、北澤潤、Nadegata Instant Party、藤浩志による新作を取り上げ、その実践に迫った本展をインディペンデント・キュレーターの服部浩之がレビューする。

現代フランスを代表するアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーの大規模個展が、国立国際美術館(大阪)から巡回し、国立新美術館(東京)にて開催されている。歴史や記憶、人間の存在の痕跡をテーマとしてきた作家の「演出」の手法とはいかなるものなのか、新進批評家として注目される仲山ひふみが論じる。

糸を用いた大規模なインスタレーション作品などで、世界的に高い評価を得ている塩田千春。25年にわたる活動を網羅的に見せる過去最大規模の個展が森美術館で開催中だ。一昨年にがんが再発し、死と寄り添いながら治療と制作を進めてきたという作家は、いま、身体や魂の存在とどのように向き合い、かたちにするのか。映像作家の中村佑子がその軌跡を論じる。

戦後の具象彫刻を牽引するいっぽうで、帝国美術学校(現・武蔵野美術大学)の創設にも関わり、以降40年間にわたり同学で教鞭を執り続けた清水多嘉示(しみず・たかし)。武蔵野美術大学美術館では、そんな清水の功績をたどる「資料展」として、清水資料の全容を可能な限り展示することが試みられた。資料調査のワーク・イン・プログレスを「展覧会」というフレームで提示した本展を、埼玉県立近代美術館学芸員の佐原しおりがレビューする。

失われたフィルム映画のタイトルをモチーフとしたシリーズを手がける平川祐樹。本展ではフランス映画を対象としたシリーズ第5作目を発表。真っ黒なスクリーンに次々と現れるのは64本の映画の原題であり、展示室にはそれを読み上げる声だけが響く。この作品に潜む言葉の虚構性の問題を中心に、アーティストの大岩雄典が考察する。

線を描きながら撮影する「ドローイング・アニメーション」で知られる石田尚志の個展が、青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)で開催された。作家にとって新たな展開となる彫刻作品など新作も発表された本展を、星野太がレビューする。

1980年から40年にわたる抽象芸術の動向にフォーカスした、国立国際美術館で開催中の「抽象世界」展。1920〜70年代生まれの作家13名の作品が並ぶ本展を、レイヤーという観点から清水穣が批評する。

今春、東京と群馬で同時期に開催された石ノ森章太郎、小谷元彦、やなぎみわの展覧会。これらの3つの展覧会を人間、機械というキーワードを通して椹木野衣が読み解く。

1969年生まれのアキラ・ザ・ハスラーと、1991年生まれのチョン・ユギョン。世代も作品の表現方法も異なる彼らが、「連帯」の旗印のもとに2人展を開催した。ゲイであるアキラ、在日コリアン3世であるチョンは、それぞれマイノリティ・グループに属する。東京藝術大学准教授でキュレーターの荒木夏実が、両作家へのインタビューをふまえ、本展をレビューする。

気鋭の建築家中山英之の個展がギャラリー・間で開催中だ。本展は模型やスケッチ、テキストで解説するという従来の建築展のスタイルではなく、竣工後の建物を住み手の目線でとらえた映像で紹介するというもの。展示を通して見えてくる中山の制作と思考のプロセスを、建築家の青木淳がときほぐす。

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。その中から、6月に公開された18本をピックアップしてお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

「“絵画”の意味が露散した時代に、私たちはなぜ“絵画”を選び、制作するのか?」。その答えを探求するべく、岡本秀、木村翔馬、小山しおり、西原彩香、松平莉奈の5名が105x148mm以内の小品を出品した「暗黙知の技術」展が京都・FabCafe Kyoto / MTRL KYOTOで開催された。本展を愛知県美術館学芸員の中村史子がレビューする。

彫刻家・小谷元彦は、これまで「ファントム(幽体)」をキーワードに、人間の痛覚や異形のものなど幅広いテーマを取り上げ、作品を生み出してきた。今年4月から5月にかけて東京・天王洲のANOMALYで行われた個展「Tulpa – Here is me」では、2017年に患った心筋梗塞の経験を経た新作を発表。「人体像」にフォーカスした本展を通して、彫刻家で彫刻研究者の小田原のどかが「日本の彫刻の歴史」への問いを開く。

晶文社を立ち上げた編集者で、ウィリアム・モリスの研究者でもあった小野二郎の展覧会が、世田谷美術館で開催された。モリスの芸術運動をめぐる考察を日本で展開させ、ヴァルター・ベンヤミンやポール・ニザンなどの著作をいち早く紹介するほか、ジャズやロック、映画関連の書籍も数多く出版。60〜80年代の出版文化に少なからぬ影響を与えた。生涯を通して「ユートピアの思想」追い求めたいち編集者の活動をたどる本展を、豊田市美術館学芸員の鈴木俊晴が考察する。