「大牟田」で暮らした画家の100年
同館の成り立ちと九州派の足跡をフックに展開する第二部「大牟田—江上茂雄の100年」では、大牟田で生きた画家・江上茂雄(1912〜2014)にスポットを当てる。三井三池鉱業所で働く傍ら独学で絵を学び、生涯にわたって大牟田の身近な風景を描き続けた人物だ。


ここでは、江上が遺した膨大な作品群からおよそ400点を厳選し、展示している。若き日の水彩画や、徴兵を免れた際に肩身の狭さを抱えながら描いた路上植物のスケッチ、クレパス等で描かれた重厚な大画面の風景画、そして定年退職後の約30年間に描かれた水彩画までが、同館のメインギャラリーを埋め尽くす。江上が生きた101年のなかで紡がれた多彩な表現は、本展のハイライトのひとつと言えるだろう。


第一部で示された「上野」の100年と、「大牟田」で制作を続けた江上の100年。九州の炭鉱資金によって建てられた都美術館と、炭鉱の地で生活に根ざした表現を貫き、美術の中央とは距離を置いた江上。一見交わるはずのなかった2つの場所と時間がこの展示空間で交差したとき、見る者は何を受け取るのだろうか。


なお、本展のおもしろさは、この3つの場所がたんに綺麗に3分割されているわけではない点にある。第二部を抜けると、第一部の続きである「1975年の新館開館以降の活動」へと一度連れ戻されるのだ。ここでは本格的なコレクション収集の起点となった収蔵品、藤岡鉄太郎《百日草の庭》(1926)と鈴木昇一《臨海学校》(1927)の2点を紹介している。その後、再び第二部の「晩年の江上の活動」を経て第三部へと向かう。場所と時間が折り重なるような構造によって、それぞれの「風景」の境界線は徐々にぼやけ、重なりあっていく。



















