EXHIBITIONS

山田弘幸「写真になった男」

2018.06.16 - 07.16

山田弘幸 Padre(部分) 2017 © Hiroyuki Yamada Courtesy of G/P gallery, Tokyo

山田弘幸 Padre(部分) 2017 © Hiroyuki Yamada Courtesy of G/P gallery, Tokyo

山田弘幸 Padre(部分) 2017 © Hiroyuki Yamada Courtesy of G/P gallery, Tokyo

山田弘幸 Untitled(#2350 upper 2014) 2017 Photo by Fuyumi Murata © Hiroyuki Yamada Courtesy of G/P gallery, Tokyo

山田弘幸 Untitled from Abrasion 2017 Photo by Fuyumi Murata © Hiroyuki Yamada Courtesy of G/P gallery, Tokyo

山田弘幸 Untitled from Abrasion 2017 Photo by Fuyumi Murata © Hiroyuki Yamada Courtesy of G/P gallery, Tokyo

 写真の魅力に囚われ、ついには「写真になった男」山田弘幸の失踪後初の展覧会が開催される。

 山田は1975年香川県生まれ。彫師の職を辞し中米での滞在を経て、2011年頃より独学で写真の制作を開始。旧日本銀行広島支店での独自企画展をはじめ、多数のグループ展やコンペティションに参加し、「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2016」でグランプリを受賞した。このグランプリの副賞として、翌年にG/P gallery(東京)で個展を開催。山田が制作したこれまでの作品をアーカイブ形式で展示した「Archived/Nosotros」は、好評につき会期が延長される。そして2017年5月13日に開催されたトークイベント内で、「Padre」シリーズについて「写真の中に入りたかった」と発言。その後、すべての作品を同ギャラリーに譲渡して失踪する。

 幼くして亡くなった山田の父を題材として、生前の姿をスクリーンに投影し、作家自身の身体を重ねるように撮影された「Padre」。写真の中に入ることを望んだ山田は、姿を消すことによってこの作品を完成させた。

 過去の実在と喪失が表裏一体となる写真の性質を「それはかつてあった」と説いたフランスの批評家、ロラン・バルトの言葉を借りるならば、「Padre」では、そうした「かつてあった」(生前の父と姿を消す前の山田)ことと「いまはもうない」(亡くなった父と姿を消した山田)ことが時間を超え、重なるように繰り返されている。