「THE TOYOTA TSUSHO CFAO African Art Award」。アフリカの現代美術を支援する新たなアワードが始動。受賞作家5人の展覧会が日本で開催

2025年夏に始動した新たなアワード「THE TOYOTA TSUSHO CFAO African Art Award」。豊田通商とCFAOが創設した本アワードは、アフリカの現代美術を国際的に発信し、アフリカ出身のアーティストの継続的な支援を目指すものだ。本記事では、そのアワードの概要とともに、記念すべき第1回の受賞者5名を紹介する。

モファット・タカディワ《The Reflections》(2022)コンピュータのキー、プラスチック製歯ブラシのヘッド 170×125cm Photo by Parmenas Awudza

 近年、アフリカの現代美術に国際的な関心が高まっているいっぽうで、アフリカ出身で同地を拠点とするアーティストへの継続的な発表機会や支援の仕組みは十分にあるとは言えない。そうしたなか創設されたのが、「THE TOYOTA TSUSHO CFAO African Art Award」だ。170年以上にわたりアフリカ各地で事業を展開してきた豊田通商とグループ会社のフランス企業CFAOのアフリカ事業におけるビジョンは「WITH AFRICA FOR AFRICA(アフリカとともに、アフリカのために)」。これを体現する本アワードは、たんなる顕彰制度ではなく、アフリカの現代美術を世界へ発信するための長期的なプラットフォームとして構想されている。

 選考は3段階で行われた。まずアフリカ各地で活動する35名のキュレーター、芸術批評家、ジャーナリストらが約100名のアーティストを推薦。その後、キュレーターチームが12名まで絞り込み、最終審査会で5名の受賞者が選ばれた。審査委員会には、ギヨーム・デザンジュ(パレ・ド・トーキョー館長)、クリス・デルコン(キュレーター、カルティエ現代美術財団マネージングディレクター)、長谷川祐子(キュレーター、美術批評)ら、アフリカ、ヨーロッパ、アジアで活動するキュレーターや文化機関のディレクターが参加した。

 受賞展は、今年6月にトーゴ・ロメのパレ・ド・ロメで開幕し、今秋には日本で、来春にはフランスに巡回を予定している。異なる地域の文化的背景をもつ5人の実践を通して、現代アフリカのアートの現在地と、その豊かな広がりを体感できる機会となりそうだ。

モファット・タカディワ──廃棄物に宿る記憶の再編

モファット・タカディワ《The Reflections》(2022)コンピュータのキー、プラスチック製歯ブラシのヘッド 170×125cm Photo by Parmenas Awudza

 グランプリを受賞したモファット・タカディワは、ジンバブエ・ハラレにあるムバレ地区を拠点とする。この地域はリサイクルやインフォーマル・エコノミーの重要な拠点であり、タカディワは地域の人々と協働しながら制作を行う。近年は2024年のヴェネチア・ビエンナーレや25年のサンパウロ・ビエンナーレなどの国際展にも参加し、ジンバブエ独立後の世代のアーティストとして注目を集めている。使用済みのキーボードや歯ブラシ、ペットボトルのキャップなど、本来は廃棄される素材を緻密に編み込み、大型の壁面作品へと再構成するその実践は、消費社会への批評性を帯びるとともに、自身の出自であるコレコレ(Korekore)の文化的背景を称えるものでもある。「見過ごされ、忘れ去られたものに新たな命を吹き込むこと」を目指した作品は、廃棄物を再生と希望の象徴へと転換する。

モファット・タカディワ Photo by InstanT Production

ゴゼット・ルボンド──歴史と現在をつなぐ写真表現

ゴゼット・ルボンド《Terre de Lait, Terre de Miel:Le même stade de marbre(乳の大地、蜜の大地:同じ大理石の段階)》(2025)紙にインクジェット印刷 80×120cm Photo by Wody Yawo

 優秀賞を受賞したゴゼット・ルボンドは、コンゴ民主共和国のキンシャサを拠点に活動する写真家だ。2014年にキンシャサ美術アカデミーを卒業後、ルブンバシ・ビエンナーレやカンパラ・ビエンナーレに参加し、26年のヴェネチア・ビエンナーレのコンゴ民主共和国パビリオンへの出展などを通じて、国際的な評価を高めている。歴史的建築物や公共空間を舞台に人物を配置した写真作品では、過去と現在、記憶と現実が交差する風景を描き出す。写真をたんなる記録ではなく、歴史との対話を生み出すメディアとして用い、植民地主義の歴史や都市に刻まれた記憶、人々のアイデンティティを静かに問いかける。「場所には人々の記憶が宿る」という視点から、忘れられた歴史を現在へと接続する。

ゴゼット・ルボンド Photo by gosette lubondo studio

ウナティ・ムコント──空間を経験する身体

ウナティ・ムコントの作品群。手前の《A pillar, block and plane arrangementⅡ(柱、ブロック、平面による構成Ⅱ)》(2023)ほか。パレ・ド・ロメでの展示風景 Photo by Wody Yawo

 同じく優秀賞のウナティ・ムコントは、南アフリカ・ケープタウンを拠点とする。ネルソン・マンデラ大学で建築を学び、ヨハネスブルグの「アーキテクチャー・フォー・ヒューマニティ」でデザイン・フェローを務めたのち、アート、建築、デザインを横断する制作を展開。ツァイツ・アフリカ現代美術館のレジデンスにも参加した。建築的な思考をもとに制作されるムコントの立体作品やインスタレーションでは、空間は鑑賞する対象としてだけでなく、身体を通して経験する場としても機能する。「日常という一見ありふれた営みを複雑化し、かたちの周囲に新たな言語を立ち上げていくこと」を軸として制作されたその作品は、鑑賞者が空間をどのように理解し、またどのようにそこに身を置くのかを改めて問いかける。

ウナティ・ムコント Photo by Kwei Shun-Yu

カトレゴ・C・L・トワラ──関係性を描き出すまなざし

カトレゴ・C・L・トワラ《Mama》(2025)キャンバスに油彩 89×60cm Photo by Wody Yawo

 スポンサー賞のToyota Tsusho Awardを受賞したカトレゴ・C・L・トワラはボツワナ出身。スウェーデン写実美術アカデミーとバルセロナ美術アカデミーで研鑽を積んだ。近年はイギリスの新進アーティストを対象とする「ニュー・エマージェンス・アート・プライズ」を受賞するなど、現代のアフリカにおける新たな潮流を体現している。古い家族写真や自身が撮影したイメージをもとに、自らをモデルとして登場させるトワラの作品は、個人的な歴史と、より広い世代的・文化的な物語とを重ね合わせている。「私の作品は、静かにそこに在ること、そして人と人とのつながりの瞬間を映し出しています」と自身が語るように、その作品は個人の経験に根ざしながらも、他者とのあいだに存在する空気感を映し出し、鑑賞者に思索や共感、自己認識を促す余白が開かれている。

カトレゴ・C・L・トワラ Photo by Sibusiso Tshabalala

ティズタ・ベルハヌ──無償の愛を描く絵画世界

ティズタ・ベルハヌ《Melting into One(ひとつに溶け合う)》(2024)。パレ・ド・ロメでの展示風景 Photo by Parmenas Awudza

 同じくスポンサー賞のCFAO Awardを受賞したティズタ・ベルハヌはエチオピア出身。アディスアベバ大学アレ美術デザイン学校を卒業後、ナイジェリアや南アフリカ、スウェーデン、アメリカ、イギリスなど国内外で作品を発表し、2026年のヴェネチア・ビエンナーレにも参加。人物同士が寄り添う姿や穏やかな日常を描いた作品では、愛や共感、困難を乗り越える力といった人間の普遍的な感情を主題としている。「アガペー(無償の愛)」を手がかりに、個人を超えて他者と結ばれる経験を繊細な色彩と柔らかな筆致で表現するベルハヌは「愛を、人と人を結びつける力を、そして私たちに共通する人間性を探求しています」と語る。その作品は感情を個人的なものとしてではなく、現代社会において人々を結びつける、共有された力として描き出している。

ティズタ・ベルハヌ Photo by Lucy Emms

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