「死後の世界」を舞台にしたンダイエ・クアグーの新作個展
コレツィオーネ・マラモッティでは、若手・中堅アーティストによる新作制作やサイトスペシフィックなプロジェクトが継続的に行われている。企画展の多くは、この空間のために構想されたコミッション形式の展示であり、完成した作品を持ち込むというより、建築や環境そのものと関わりながら展開されるケースが多い。
例えば、今年5月に開幕した「Heaven’s truth」(〜7月26日)は、フランス人アーティスト、ンダイエ・クアグー(Ndayé Kouagou)によるイタリア初個展だ。本展は、レッジョ・エミリアで毎年開催される写真祭「Fotografia Europea 2026」の一環として企画されたものでもあり、新作を中心とする映像、インスタレーション、壁面作品によって構成されている。

展示タイトルにもなっている《Heaven’s truth》(2026)は、3章構成の映像作品を中心に、立体、空間演出を組み合わせて展開されるプロジェクトである。映像内のキャラクターたちが空間へ拡張され、鑑賞者は映像を見るだけではなく、展示空間を移動しながら作品を体験する構成が取られている。
作品には4匹の“犬”が登場する。拒絶、暴力、報復、裁きといった感情の連鎖を経て、舞台はやがて「死後の世界」へ移行する。そこでは、クアグーが扮した“裁く側”としての存在が死後の世界にいる4匹の犬を判断しながら、同時に自分自身もまた彼らの視線や評価から逃れられない状況に置かれている。

作品内で描かれる「死後の世界」は、現実とは切り離された完全な空想空間ではない。むしろそこでは、現実社会に存在する価値判断や他者評価の構造が、かたちを変えながら繰り返されている。クアグーは、「人は本当に別の社会を想像できるのか」という問いに関心を持っていると語る。

また、クアグーの作品には、「鍵」や「コイン」といった日用品が繰り返し登場する。過去作《A coin is a coin》(2022)でも、コインの表裏という単純な構造を起点に、「自由」や「権力」といった概念がどのように反転しうるのかが扱われていた。展示全体にはユーモアと不安、哲学的思索とポップな演出が混在しており、鑑賞者は物語を追いながらも、どこか足場の定まらない感覚へ導かれていく。



















