ウクライナ・パレスチナ連帯と広がるストライキ
緊張がさらに高まったのが、5月6日にロシアのフェミニスト・アート集団「Pussy Riot」と、ウクライナの女性運動団体「FEMEN」がジャルディーニ内のロシア館前で実施した大規模な抗議行動だ。ピンクの目出し帽を被った参加者たちは、煙幕や音楽とともにロシアによるウクライナ侵攻への抗議を訴え、会場には多数の警察官や警備員が出動した。このパフォーマンスは瞬く間に国際メディアで報じられ、今年のビエンナーレを象徴する光景のひとつとなった。


その後も、ヴェネチア共和国時代の造船所跡を活用したメイン会場「アルセナーレ」と、各国パビリオンが集まる「ジャルディーニ」の両会場では、パレスチナ連帯を掲げる抗議活動が連日のように続いた。なかでも5月8日、ANGA(Art Not Genocide Alliance)が呼びかけたストライキは大きな広がりを見せ、オランダ、オーストリア、ベルギーなど20以上の国別パビリオンが、半日あるいは終日にわたり閉館する事態となった。
オランダ館代表作家のドリース・フェルホーヴェンは、「ビエンナーレは中立的な文化交流の場だとされているが、実際には極めて政治的な空間だ」と語る。「イスラエル館がアルセナーレという中心的な場所に存在することは、ガザやヨルダン川西岸で起きている行為を正当化することにつながりかねない。私たちは、それを受け入れるべきではないと考えている」。

こうした流れのなかで、日本館もまた5月8日に一時的な閉館という対応を取った。当初は作家側の判断によるストライキとして展示が停止され、その後、代表作家の荒川ナッシュ医、共同キュレーター、そして主催者である国際交流基金との協議を経て再開された。しかし、展示の中心である「赤ちゃん」たちは、“ストライキ”を続行するかたちで展示空間から姿を消したままとなった。
日本館はその後発表した声明で、「赤ちゃんたちは自発的に音楽を止め、沈黙することを選んだ」と説明。「この『赤ちゃんたちのストライキ』は、展示の根幹にある問いそのもの」であり、「私たちは本当に安心して暮らせる世界を築いているのか」と来場者へ問いかけた。



















