韓国・ソウルのアートソンジェセンターにて、香港のサンプライド財団による展覧会シリーズの第4回となる「Spectrosynthesis Seoul(スペクトロシンセシス・ソウル)」が開催されている。
これまで台北(2017)、バンコク(2019–20)、香港(2022–23)で開催され、2027年には東京都現代美術館での開催も予定されている本シリーズ。今回のソウル展は、クィアを主題とした韓国初の大規模な美術館展であり、74組のアーティストが参加するシリーズ最大規模の構成となっている。

サンプライド財団の創設者パトリック・サンは、本展の開幕に際して次のように語る。「スペクトロシンセシスはサンプライド財団のコレクションを見せる展覧会だと思われがちですが、そうではありません。財団のコレクションはあくまで出発点にすぎず、キュレーターとアーティストがそれを再構成し、開催地の文脈に応答するかたちで新たな展覧会が生成されます」。
そのなかでも今回のソウル展は、とりわけローカル性を強く打ち出した構成となっている。参加作家のうち約半数が韓国出身であり、サン自身も「これはこれまでの回とはまったく異なる展覧会だ」と述べる。その特徴を彼は「ヴァリデーション(正当化)」「ローカライゼーション」「グローバリゼーション」という3つのキーワードで説明する。

まず「ヴァリデーション」とは、クィアの存在が制度的な空間において正式に承認されることだ。ソウル中心部に位置し、長年にわたり現代美術の言説形成を担ってきたアートソンジェセンターで開催されること自体が、クィアの文化的実践の正当性を示す行為となる。次に「ローカライゼーション」として、韓国の歴史や社会状況に根ざした作品やリサーチが展覧会の核を形成している点が挙げられる。そして「グローバリゼーション」として、今回は初めてアジアに限定せず、欧米を含む国際的な作家が参加している。
展覧会は大きく2つのセクションから構成される。前半の「The Two-Sided Seashell」はアートソンジェセンターの芸術監督キム・ソンジョンによるキュレーションで、美術館全体を「移行的な空間」として再編する試みだ。いっぽう、後半の「Tender: Invisibly Visible, Unlocatably Everywhere」はキュレーターのイ・ヨンウによって構成され、韓国のアーティスト20名と香港の作家1名の作品を通じて展開される。記憶、場所、形式という3つの軸を手がかりに、韓国におけるクィア・アートの現在地を捉え直すと同時に、都市のなかに形成されてきたクィアな空間のあり方を再考するセクションとなっている。

また本展では、アーティストのキム・ソンファンがサンプライド財団のコレクションから作品を選定し、それに応答するかたちでエッセイを執筆するという試みも導入されている。コレクションを固定的なものとして提示するのではなく、アーティストの視点を介して再解釈するこのアプローチは、本展に厚みを与えている。































