NEWS / PROMOTION - 2019.12.3

「すべての人々は平和的に共存できる」。東南アジアで最大級のLGBTQ展「SPECTROSYNTHESIS II」が開催

レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャル、クィアをテーマに、東南アジアで最大級のLGBTQ展「SPECTROSYNTHESIS II – Exposure of Tolerance: LGBTQ in Southeast Asia」が、タイのバンコク芸術文化センター(BACC)で開催されている。会期は2020年3月1日まで。

 

スニル・グプタ The New Pre-Raphaelites #5 2007

 東南アジアの現代美術史上最大級の、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャル、クィア(LGBTQ)アーティストの制作活動に注目する展覧会「SPECTROSYNTHESIS II – Exposure of Tolerance: LGBTQ in Southeast Asia」が、2020年3月1日までバンコク芸術文化センター(BACC)で開催されている。

 本展は、BACCが香港のサンプライド・ファンデーション(驕陽基金會)と共同で行うもの。同ファンデーションの設立者、パトリック・ソンは、今回の展覧会をバンコクで開催する理由について、「タイは、東南アジアにおいてLGBTQの権利を支持する面でもっとも進歩的な国のひとつです。ですから、その開催地をバンコクにしたのは自然な選択なのです」と話す。

展示風景

 「2番目の理由としては、タイは東南アジアの中心に位置する国だからです。地元の人だけでなく、ミャンマー、インドネシア、シンガポールなど近隣の国の人々にも見てもらいたいです。性的指向の異なるすべての人々が平和的に共存できるということを人々に伝える思いから、今回の展覧会を企画しました」。

 2017年、同ファンデーションは台北の台北当代芸術館で「SPECTROSYNTHESIS – Asian LGBTQ Issues and Art Now」を開催し、大きな注目を呼んだ。今回の展覧会は、その続編であり拡大版とも言えるものだ。

 22人のアーティストによる約50点の作品を展示した台北での展覧会に対し、今回は50人以上のアーティストが参加し。約130点の作品が展示されている。「今回の会場は、天井が高く太陽の光が差し込む美しい空間。ボリュームが大きくなり、より華々しい作品を展示することで、展覧会の雰囲気も変わりました」。

展示風景より、スー・フェイユ《Ne Quan》(2015)

 本展では、東南アジア出身のアーティストに加え、インド系や中国系のアーティストによる絵画や写真、映像、彫刻、インスタレーションを展示。それらの作品を通し、LGBTQコミュニティが抱く不安や悩み、その現状に関する対話を生みだし、確立された規範や価値観への疑問を呈する。また、LGBTQやジェンダー問題だけでなく、東南アジア地域独特の文化的・宗教的伝統についても考察する。

展示風景より、チョヴ・シンリー《Hoch》(2019)

 カンボジアのアーティスト、チョヴ・シンリーの絵画《Hoch》(2019)では、トランスジェンダーの女性の鼻のすぐ下に水平線が描かれており、水の中でかろうじて呼吸しているように示している。本展のキュレーター、チャヴィチャイ・プロマダッタヴェディはこの作品について、「水を描くのではなく想像させる。浮遊する様子は、LGBTQをめぐる状況の不確実性や緊張性を示しています」と語る。

展示風景より、オーム・ファンフィロイ《Underage》(2010)

 バンコク出身の写真家、オーム・ファンフィロイの短編映画《Underage》(2010)では、タイにおける児童買春の問題に注目。10代の少年男娼たちによる自白を示しながら、彼らの絶望や勇気、生存本能を描写している。

展示風景より、ジョセフ・キャリアの写真アーカイヴ

 ベトナム出身のアーティスト、ヤン・ヴォーは、人類学者であるジョセフ・キャリアによる写真アーカイヴと彫刻作品《We The People(detail)》(2011-16)を展示。キャリアの写真では、戦時下でのベトナム人男性同士が人前で手をつないだり、寄りそって立っているプラトニックな恋愛がとらえられている。

 いっぽう、ヴォーの《We The People(detail)》は、『自由の女神像』を正確に複製し、それを300以上の異なる断片に分解させ、さまざまな場所に点在させる作品。その断片のひとつを展示することで、既存の認識に挑戦し、すべての人が同じ権利を有するべきであることを強調する。

展示風景より、右はホー・タム『Poser』(2013-16)

 香港出身のアーティスト、ホー・タムは、特定のコミュニティに焦点を当てた写真作品を発表してきた。本展では、タムが制作した雑誌『Poser』(2013-16)を展示。この雑誌では、バンコクの仏教徒や、トロントの遊園地でぬいぐるみを持つ男性の姿をとらえ、日常生活のなかで直面する多様性などの問題が考察されている。

展示風景より、キティ・ナロッド《Horizon》(2019)

 キティ・ナロッドの《Horizon》(2019)では、様々な人が平和に共存している様子が描かれている。ユートピアのような世界では、すべての人が肉体的にも精神的にも平等になることができる。そんな思いがキャンバスに託されている。

展示風景より、デイビット・メダラ《A Stitch in Time》(1968 / 2019)

 本展のハイライトのひとつは、デイビット・メダラによる参加型インスタレーション《A Stitch in Time》(1968 / 2019)だ。メダラが1968年に初めて発表した本作は、自分自身の経験にもとづいて制作したもの。ロンドンの空港でメダラが元恋人に渡したハンカチは、数年後にアムステルダムで出会ったバックパッカーのかばんに縫ってあった。個人的な記憶に触発され、メダラは運命に対峙する作品を発表した。

 本展のオープニングレセプションでは、鑑賞者が私物をその作品に縫い合わせるパフォーマンスが行われた。72年の「ドクメンタ5」では、ヨーゼフ・ボイスやデイヴィッド・ホックニー、マルセル・デュシャン、オノ・ヨーコなどのアーティストも、同じパフォーマンスに参加したという。

展示風景

 主催者のひとりであるソンは、本展を通して「すべての人を平等に扱うこと」を目指しているという。「LGBTQの人々は、自分たちを誇りに思ってほしいのです。いまでは公立美術館で何も隠さずに(LGBTQテーマの)展覧会を行うことができます。私たちは、彼/彼女たちがパブリックに、自分を隠さずに生きられることを願っています」。

 また一般の人々に対しては、「名前がよく知られている偉大なアーティストの多くが性的マイノリティであることを知ってほしいです」と呼びかける。「私たちは誰の権利も奪うことはできない。私たちは、みんながこの世界で幸せに、平和に共存することだけを願っています」。