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「瀬戸内国際芸術祭2025」夏会期(大島、引田、志度・津田エリア)開幕レポート。地域に眠る人々の記憶に眼差しを向ける【3/6ページ】

 山川冬樹は大島港周辺に3点の作品を展示。そのうちの1点で、青松園の入所者であった歌人・政石蒙さんの人生をテーマとした新作のインスタレーションをここでは紹介したい。

大島内にある教会

 政石さんには、学生時代に将来を誓いあった美紗子さんという女性がいたが、ふたりは戦争や政石さんのハンセン病の罹患から人生をともにすることが許されなかった。山川は、「想像のなかだけでも、ふたりの結婚を祝福したい」とし、音と映像、照明を用いて、ふたりの結婚式をとり行っている。国による政策がいかに人々の人生を左右してきたかということについても、改めて考えさせられる作品であった。

展示風景より、山川冬樹《結ばれて当たり前なる夫婦なりしよ》。夫婦として結ばれることはなくとも、ふたりの縁は生涯にわたって続いた。ふたりのなかに存在していた特別な想いは、作品や展示資料からも伝わってくる
展示風景より、山川冬樹《結ばれて当たり前なる夫婦なりしよ》の一部資料

 梅田哲也は、大島に流れる水を用いて《音(おと)と遠(とお)》という作品を提示した。地中に掘られた共鳴窟のなかで反響する水の音はやさしく澄んでいる。この作品は、この大島に住む人々、そしてハンセン病によって目が見えなくなった人にも向けられている。

展示風景より、梅田哲也《音と遠》
大島内にある井戸
社会交流会館内の資料展示より、当時の井戸の様子

編集部