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「瀬戸内国際芸術祭2025」夏会期(大島、引田、志度・津田エリア)開幕レポート。地域に眠る人々の記憶に眼差しを向ける【5/6ページ】

志度・津田エリア

 さぬき市にあたる志度エリアも今回初めて会場となる。四国遍路のひとつである志度寺の門前町であり、江戸時代には農産物の集散地であったことから、商業都市としても発展してきた場所だ。また、津田エリアには、白砂青松の景勝地「津田の松原」があり、海岸沿いには約1キロメートルにもおよぶ松林が広がっている。

 まずは志度エリアから見ていきたい。志度寺の庭園には、フィリピン出身のリーロイ・ニューによる巨大なオブジェが出現した。これは、フィリピン神話に登場する船「メブヤン」をモチーフとしたもので、素材は普段我々が排出するペットボトルなどのゴミを再利用するかたちで活用されている。リーロイによると、ゴミの排出量はフィリピンでも大きな問題となっており、自身の国の未来に思いを馳せながら制作にあたったという。

四国遍路では第86番札所にあたる志度寺
展示風景より、リーロイ・ニュー《メブヤンのバランガイ(メブヤンの船または聖域)》

 イギリス出身でアメリカを拠点とするニール・メンドーザは、日本の「付喪神」に関心を持ち作品制作を行った。付喪神は長く使われた道具や物に魂が宿るとされる民間信仰であり、メンドーザはこの日本ならではの「人ともの」の考え方をもってして、現代社会における大量生産・大量消費に切り込んでいる。

展示風景より、ニール・メンドーザ《合成されし魂》。イメージはAIを用いて生成されているため、モニターには毎回異なる付喪神が現れる
展示風景より、ニール・メンドーザ《合成されし魂》

 現在大河ドラマでも注目を集めている幕末の発明家、平賀源内がこの志度の地で生まれていたことをご存知だろうか? 同地の平賀源内記念館では、やんツーが平賀源内のエピソードをもとに「エレキテル」を用いたインスタレーション作品を展開している。

展示風景より、やんツー《風雷讃甚》
展示風景より、やんツー《風雷讃甚》。展示ケースにはそれぞれ発電機が設置されており、ケース上部のボタンを押すと起動する仕組みだ

編集部