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「瀬戸内国際芸術祭2025」夏会期(大島、引田、志度・津田エリア)開幕レポート。地域に眠る人々の記憶に眼差しを向ける【2/6ページ】

大島エリア

 大島は、高松港のから北東約8キロメートルに位置する小さな島だ。ここには、日本国内に13ヶ所ある国立ハンセン病療養所のひとつ「大島青松園」があり、ハンセン病患者を撲滅することを目的とした「らい予防法」が廃止される1996年までの約90年間にわたって入所者が強制的に隔離されてきたという過去がある。

 大島が瀬戸芸に参加することとなったのは2008年のこと。瀬戸芸を通じて大島で起こった歴史を多くの人に伝えていくことを目的としている。ここでは、「ハンセン病」や「大島青松園」の歴史と現在、そして未来について考えながら作品を見ていきたい。

大島からの風景

 ウクライナ・キーウ出身のアーティスト、ニキータ・カダンは、ハンセン病患者が使用していた自助具をモチーフに彫刻作品《枝と杖(支えあうことのモニュメント)》を制作した。カダンは同地にあるハンセン病資料館を見たのち、ここで起きた事象とその痛みについて考えを巡らせ、作品の制作について地域住民に説明を行ったという。

 カダンは自身の故郷で起こっていることと重ねあわせながら、同作について次のように語った。「悲劇的な歴史のなかでも、患者たちがお互いを支えあって生きていたことがわかった。本作で伝えたいのは、落ちてきてしまうものを、ほかのものが支えることの重要性だ」。

展示風景より、ニキータ・カダン《枝と杖(支えあうことのモニュメント)》。いまにも落ちてきそうな人の手を、義手や義足が支えている

 ハンセン病や大島青松園についての資料は、大島にある社会交流会館で展示されているため、上陸した際は必ずチェックしてほしい。また、同施設内にあるカフェ・シヨルでは、やさしい美術プロジェクトによる陶芸作品や、鴻池朋子による「物語るテーブルランナー」シリーズも展示。会期中の土日にはカフェも営業しているため、大島で採れた食材を使ったメニューを楽しむのもよいだろう。

社会交流会館のカフェ・シヨルでは、やさしい美術プロジェクトによる「大島焼」の展示など、様々な活動に触れることができる
展示風景より、鴻池朋子「物語るテーブルランナーと指人形 in 大島青松園」。今回取材することは叶わなかったが、鴻池は大島内にも《リングワンデルング》という作品を展開している
社会交流会館内の資料展示。大島全体のジオラマや写真資料を見ておくと、作品のコンセプトも理解しやすいだろう
社会交流会館内の資料展示

編集部