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「瀬戸内国際芸術祭2025」夏会期(大島、引田、志度・津田エリア)開幕レポート。地域に眠る人々の記憶に眼差しを向ける【4/6ページ】

引田エリア

 今回初めて会場となった引田(ひけた)エリアは、香川県の最北部にある東かがわ市に位置し、瀬戸内海の播磨灘や阿讃山脈に囲まれた自然豊かな地域だ。また、同地は日本一の手袋産業地でもあり、それによって栄えた町並みがいまなお残っているのも魅力的なポイントと言えるだろう。ここでは、そのような土地の歴史を紐解きながら制作された作品やプロジェクトを紹介したい。

引田エリアの風景

 インドのラックス・メディア・コレクティブ(ジーベシュ・バグチ、モニカ・ナルラ、シュッダブラタ・セーングプタ)は、酒蔵であった笠原邸をインスタレーション/パフォーマンス空間として生まれ変わらせた。色鮮やかな光とグラフィックが印象的なインスタレーションは、酒をつくる際の麹菌からインスピレーションを受けたとメンバーのナルラは語る。目に見えない発酵の様子と時間の流れを可視化したその様子は、非常に有機的な動きを見せている。

展示風景より、ラックス・メディア・コレクティブ「KASAYAソーシャル/パフォーマンス・スペース+アートワーク」
展示風景より、ラックス・メディア・コレクティブ「KASAYAソーシャル/パフォーマンス・スペース+アートワーク」

 もともと倉庫であった場所を甦らせた「手袋ギャラリー」には、ロシア出身のアーティストであるレオニート・チシコフと、絵本作家のマリーナ・モスクヴィナ、そして建築士の宮崎晃吉+顧彬彬らによって設られた特別な空間が待ち受けている。会場内では、同地の手袋産業の歴史やその素材、技術などが紹介されているとともに、手袋を通じて、引田と世界そして宇宙とのつながりを感じさせるようなストーリーがインスタレーションと絵本のなかで語られている。

展示風景より、レオニート・チシコフ+マリーナ・モスクヴィナ《みんなの手 月まで届く手袋を編もう!》。中央にある手袋のオブジェは、地域住民の協力のもと集めた古着を用いて制作されている
展示風景より、レオニート・チシコフ+マリーナ・モスクヴィナ《てぶくろの童話》
展示風景より、引田の手袋産業を伝える展示

 ほかにも、同エリアの各所では、東京藝術大学と香川大学が共同で取り組む引田のまちづくりプロジェクト「ぐんだらけ」が展開されているため、あわせて足を運んでほしい。

展示風景より、沼田侑香《積層される情報》
展示風景より、桒原寿行《奉納和船の出航 - 「あまりものたち」の物神を、 海に奉納する。》
展示風景より、新居俊浩《引田市井分解図》
展示風景より、新居俊浩《引田市井分解図》

編集部