第1章「ザ・シクスティーズ」では、ポップ・アートが生まれた時代背景である1960年代に焦点が当てられている。若者がベトナム戦争や人種差別に反対し、ビートルズを筆頭に「愛と平和」が叫ばれるなか、ケネディの暗殺や初の月面着陸というニュースが起きていたのもこの時代である。そんな時代に生まれたポップ・アートは、当時流行していた抽象表現主義とは一線を画すものだった。未来派やシュルレアリズムのような宣言がなかったことも特徴のひとつ。ここでは、この後に紹介されるアーティストの作品が並列で展示され、作品からその時代の空気を感じ取ることができるような構成となっている。

第2章は「戦争をしないで、恋をしよう(音楽を奏でよう)」。このフレーズは、ベトナム戦争に反対するスローガンを起源としている。世界に分断を生んだベトナム戦争の社会的混乱のなか、新しい文化の芽生えに影響を与えたのは、公民権運動、フェミニズム、平和の希求、そして音楽とアートだった。
ジャスパー・ジョーンズがベトナム戦争に強く反発して制作した作品《モラトリアム》が展示されている。星条旗を迷彩服を思わせる色で描き、誰もが目にしたことのある、アメリカを象徴する記号であるモチーフへの違和感を誘発することで、彼なりのメッセージを表明した作品だ。




















