ポップ・アートの先駆者のひとりとして知られるジャスパー・ジョーンズ。そのシリーズ「Usuyuki」から、版画とドローイングあわせて9作品を紹介する展覧会が、東京・表参道のファーガス・マカフリー東京で開催される。会期は11月1日~12月21日。
作曲家ジョン・ケージとの交友を通して日本文化への関心を深め、1959年にニューヨークで評論家・東野芳明に出会ったジョーンズ。以降東野はジョーンズについて多くの評論を書き、日本にその作品を紹介した。また60〜70年代には東京に短期間スタジオを構えたり、展覧会を開催したりと、ジョーンズは度々日本を訪れていた。
今回展示される「Usuyuki」シリーズは79年から2004年にかけて制作され、絵画4作品、ドローイング15作品、版画5作品からなる。「薄雪」は移ろいゆく天候、不意の訪れや出会い、その後の突然の旅立ちを連想させるもの。ジョーンズは18世紀の歌舞伎演目『新薄雪物語』をきっかけに、「薄雪」という言葉に深い関心を持ったという。
同シリーズは24作品すべてを通して、グリッド状に区分されたクロスハッチングの画面をもとに展開。ジョーンズはグリッドごとに振られた番号を元に回転、鏡像、トリミング、反復の効果を用いてバリエーションを生み出している。本展では、表面のテクスチャーと絶妙な色使いによるシリーズ最初の版画作品である1979年のリトグラフも展示される。
またジョーンズは80年、卓越した技術を持つ刷り師である川西浩史、野中健次郎、島田毅がニューヨークで設立した「シムカ プリント アーチスツ」でプリントを制作。81年からは新聞記事の文字を基盤とした作品を手がけたほか、シリーズ後期の作品では生き生きとした色味が影を潜め、黒と白の顔料による結晶のような構造が組み立てられている。本展ではこうしたシリーズの変遷とともに、ジョーンズが見出した抽象表現と日本哲学のつながりを垣間見ることができるだろう。
なお本展にあわせて、同ギャラリーは「Usuyuki」シリーズの全容を収めた初となるカタログを制作。こちらもあわせてチェックしたい。