「具体」の聖地で検証する、その功績【2/8ページ】

 建物1階ロビーには、先述の「野外実験展」と、翌1956年にやはり芦屋公園で開催された「野外具体美術展」(主催:具体)というふたつの野外美術展を編集して屋内に再現。吹き抜け空間の天井高を活用した展示空間には、白髪一雄が赤い丸太を組み合わせて制作した《どうぞ、お入りください》(1955/1993)や、元永定正による液体作品《作品(水)》(1956/2025)などと併せて、田中敦子の《作品(ベル)》(1955/2000)も展示。来場者が自由にスイッチを押すことができるこの作品によって、会場内には断続的にベルの音が響き渡る。

展示風景より

 2階に上り、最初に出会うのは4点の絵画作品だ。「ひとの真似をするな、今までに無いものをつくれ」という吉原の思想が求心力となった「具体」では、どのような画材を用いるか、絵筆の代わりに何を使うか、という発想のもとで新たな表現が探求された。例えば吉原治良は円を描いた油彩作品の数々で知られているが、その画風を確立したのは1960年代半ばのこと。それまでには多様な絵画表現を試し、模索を繰り返した。また、破った紙を用いた《紙破り》や《剥落する絵画》で知られる村上三郎は、「野外具体美術展」では景色そのものを絵の「主題」とすべく、額縁を木の枝から吊るした作品《あらゆる風景》を発表した。

展示風景より、左から上前智祐《作品》(1958)、吉原治良《作品》(1958)、白髪一雄《地熱星鎮三山》(1961)、嶋本昭三《作品》(1963頃)
展示風景より、左から東貞美《作品》(1953)、金山明《WORK》(1954)、吉原治良《作品》(1955)
展示風景より、村上三郎《あらゆる風景》(1956/1992頃)個人蔵

編集部