プライベート空間に没入できるような様々な工夫
人の出入りがオープンな設計となっている本施設だからこそ、外との線引きをしっかり行い、客室内というプライベート空間に、宿泊者が没入できるような工夫も見られる。
例えば、泊船のイメージに合わせて選書された本や、再生プロジェクトの背景やコンセプトがしっかりと伝わるようなジャーナルが用意されている。また、東京・蔵前の文房具店「カキモリ」の文箱(ふみばこ)が設えに取り入れられており、滞在するなかでの気づきなど、自分のいまの気持ちを自由にしたためることができる。ほかにも伊賀という土地に由来する、こだわりにあふれたプロダクトが揃っており、自然とこの土地や空間に思いを馳せる時間をつくるための工夫が満載だ。



モダニズム建築の巨匠・坂倉準三による名作が、保存されるだけでなく、新たに再生され人々が集う場所になるということは、「建築は生きた人間のためのものである」という坂倉の哲学そのものを体現しているといえるだろう。これからこの場所に集う「生きる人間」たちによって、新たな伊賀の未来が紡がれていくに違いない。



















