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いま、坂倉準三を回顧する意味とは? 髙島屋史料館 TOKYOで展覧会開催

日本橋髙島屋本館にある髙島屋史料館 TOKYOで、髙島屋創業190年を記念した企画展「建築家・坂倉準三と髙島屋の戦後復興-「輝く都市」をめざして―」がスタート。ル・コルビュジエに師事し、モダニズム建築の大家としても知られる坂倉準三をいま回顧する意味とは?

展示風景より、髙島屋和歌山支店の1/100木模型(2021)

 モダニズム建築を語るうえで欠かせない建築家・坂倉準三(1901〜1969)。その仕事を振り返る企画展「建築家・坂倉準三と髙島屋の戦後復興-「輝く都市」をめざして―」が、東京の日本橋髙島屋本館にある髙島屋史料館 TOKYOで始まった。会期は2022年2月13日まで。

展示風景より

 1929年に渡仏した坂倉は、モダニズム建築史上もっとも重要な建築家のひとりであるル・コルビュジエに学び、37年にはパリ万国博覧会で「日本館」 の設計を手がけた。本展は、この「日本館」に出品していた髙島屋と坂倉の出会いを起点に、坂倉の仕事と髙島屋の戦後復興を紹介するもの。監修は建築史家で京都工芸繊維大学教授の松隈洋。

展示風景より

 坂倉は住宅や公共建築、都市デザインで広く知られるが、そのキャリアにおいて髙島屋との関わりは重要なものだった。戦後間もない1948年には「髙島屋和歌山支店」を、50年には「髙島屋大阪難波新館改増築(ニューブロードフロア)」の仕事で大きな成功をおさめ、これが57年の「南海会館」の設計へとつながっていく。

 この髙島屋和歌山支店は小規模な木造建築だったが、坂倉の都市的視点からなる商業施設の先駆けといえるもので、各階をスロープでつなぐという当時としては斬新であり、近代的な百貨店空間だった。本展では、このいまはなき髙島屋和歌山支店を模型とCGで再現。写真資料や図面とともに振り返る。

展示風景より、髙島屋和歌山支店の1/100木模型(2021)
展示風景より、髙島屋和歌山支店のCG(2021)

 こうした髙島屋との仕事は、いまなお残る坂倉の「新宿西口広場・地下駐車場」(1966)へと接続するものであり、本展ではその流れを豊富な資料とともにたどることができる。

展示風景より、東野芳明「新宿西口“広場”の生態学」(『中央公論』1969年10月号)の手書き原稿
展示風景より

 監修者の松隈は、本展開催に際して「2000年代に入り、大規模な再開発が進んでいるが、こうした坂倉の仕事をきちんとアーカイブして伝えていかないといけないのではないか」とその意義を語る。

 「坂倉がル・コルビュジエと出会ってから90年が経つ。坂倉が目指した、人間のための建築という考えがはたしていま共有されているのか。建築はバトンを受け取る仕事の繰り返しであり、建築は人間より長い時間を生きる。いま、次々と巨大な建築がつくられているが、それは50年後を見通せているものなのだろうか。美術館とは違い、百貨店という場所でこういうものに接してもらうことで、坂倉の仕事の意義を発信していきたい」。

 奇しくも今年、坂倉が設計した小田急百貨店新宿店本館が2022年に解体されることが発表された。また近年は前川國男設計の東京海上日動ビルなど、近代建築が存続の危機にさらされている。本展を通じ、坂倉が目指した建築あるいは都市のあり方を考えたい。

編集部

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