ホテルエリアでは、視線の抜けや自然光を意識した動線設計がなされている。まず階段を上がった先に見えるのは、幅の広い廊下である。建物自体が市指定文化財であるがゆえに、改築にあたって残さなければいけなかった部分がいくつかあるが、そのひとつがこの廊下だ。


ぐるりと一周するように客室が並び、真ん中には中庭が2つある。中庭で一際目を引くのが煙突だ。煙突は当時機能していたようだが、現在は老朽化の影響もあり使われていない。撤去する方針も出ていたが、市の意向で残すことになったという。船に見立てた本ホテルにおいては、そのコンセプトを表すという役割をなしているとも考えられる。

また坂倉が意図していた内と外を繋げる空間づくりにおいて、自然現象を積極的に取り込むといった工夫のひとつも、この中庭で見つけることができる。建物から突き出しているガーゴイル(雨樋の機能をもつ、怪物などをかたどった彫刻)を採用することで、通常隠すはずの雨水の流れをあえて見せている。建物のなかにいながら自然のリズムを感じられるだろう。





















