第2章 「文展は広告場」 ―展覧会という乗り物にのって
画家になるべく上京した竹坡と国観は、それぞれ円山派の川端玉章、歴史画の小堀鞆音(ともと)に入門、次々と展覧会に入選して頭角を現す。刺激を受けた兄・越堂も追って43歳で文展デビュー、1912年(大正元年)には3人揃っての文展入選を果たし、竹坡の言のごとく展覧会制度を最大限に利用して画壇の寵児となる。いっぽうで前述のとおり、様々な挫折も味わった。
屏風が並ぶ壮麗な展示では、先んじて二等賞第二席を獲得した国観の歴史画に、構図、人物表現、臨場感の妙を感じよう。弟に負けじと翌年二等賞となった竹坡の作からは、生来の画才に師譲りの写実と独創を美しく融和させる手腕を楽しみたい。華やかな弟たちの陰になりがちな越堂だが、じつはもっとも大胆な構想を静かにやってのけるのは彼かもしれない。
国観の《絵踏》も注目。岡倉を面責した竹坡に連なり、わずか数日で撤去され、遺族のもとに保管されていた本作は、2022年に泉屋博古館東京に寄贈され、修理と表装を得ての初公開だ。秀逸な構図が生む緊張感と、多彩に描き分けられた人物を丁寧に追いたい。