わたしを変えた展覧会:「MOTアニュアル2006 No Border -『日本画』から/『日本画』へ」(東京都現代美術館)

現役のキュレーターや研究者が、自分に大きな影響を与えた展覧会を振り返り、共有するシリーズ。今回は、東北芸術工科大学で教鞭を取るキュレーター・小金沢智が「MOTアニュアル2006 No Border -『日本画』から/『日本画』へ」(東京都現代美術館、2006年01月21日〜03月26日)を語る。

文=小金沢智(東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師、美術館大学センター研究員)

左から、三瀬夏之介《奇景》(2005)、《奇景》(2003-2005)、《奇景/日本の絵》(2005、両面に描画、部分)
「MOTアニュアル2006 No Border」(東京都現代美術館、2006)展示風景
撮影=大谷一郎
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 あれは大学4年生の卒論を提出して間もない頃。確か、その日記をmixiに書いていたな......と思ってログインしようとしたら、ログインするためのメールアドレスは昔の携帯で、パスワードもわからなくなっていました。もう18年前のことです。

 私の「わたしを変えた展覧会」は、2006年、東京都現代美術館で開催された「MOTアニュアル2006 No Border -「日本画」から/「日本画」へ」(2006年01月21日〜03月26日)。後にも先にも、東京都現代美術館で開催された唯一の日本画の展覧会です。たぶん、この展覧会を見ていなかったら今の自分はないだろうな......と思うくらい、大きな影響を受けました。

左から、天明屋尚《神風》(2003)、《現代日本若衆絵図 パラパラ(大日本帝国)対ブレイクダンス(亜米利加)》(2001)、《現代日本若衆絵図 鎌倉 九人の侍》(2001)、《トラック野郎》(2003)
「MOTアニュアル2006 No Border」(東京都現代美術館、2006)展示風景
撮影=大谷一郎

 当時の私は、大学で日本・東洋美術史のゼミに所属していて、卒業論文は河鍋暁斎(1831〜1889)。人気のある画家なので知っている人も多いのではと思いますが、当時はまだまだ、「知られざる画家」という趣だったと思います。2年後の2008年、京都国立博物館で大々的な暁斎展(「没後120年 河鍋暁斎展」)が開催されて、いまや、幕末・明治を代表する画家のひとりになっています。

 18年前、20代前半の私の関心は、現代美術というより近代美術でした。東京都現代美術館はあまり馴染みがなく、どちらかと言えば、好きだったのは東京国立近代美術館。「RIMPA展」(2005年)を機に、東京国立近代美術館では大学3年生の夏から看視のアルバイトも始めていました。もしかしたら、「MOTアニュアル」に行ったのはこれが初めてだったかもしれません。