「Everyday Enchantment 日常の再魔術化」(シャネル・ネクサス・ホール)開幕レポート。興味をかき立てる造形が提示する日常のなかの気づき【3/4ページ】

 小林椋は1982年、東京都生まれ。既視感のある造形とギミック、音や照明などを組み合わせ、目的が明らかではない装置を制作している。本展で小林は、消費社会のなかで反復される造形的なイメージをオブジェクトとして具現化。そのアイデアソースには、例えば1930年代のアメリカの工業デザインなどがあるという。会場に構築され、パーツがゆっくりと回転する小林の作品はその流線型の造形などに、過去の流行との接続を見出だせる。

展示風景より、小林椋《ここから握り見ることのできる節足の引き潮は段々》(2024)

 小林はプラスチックという素材の成り立ちについても着目し、本作を制作している。初期のプラスチックである「ベークライト」は、石油精製の過程で出るコールタールを有効活用することで生まれた。本来は廃棄物であったものから人類の生活様式を一変させるにいたったプラスチックの物語も、本作には織り込まれている。

展示風景より、小林椋《ここから握り見ることのできる節足の引き潮は段々》(2024)

編集部

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