知育玩具を思わせるカラフルなオブジェや、ディスプレイを率いたシンプルで大がかりな装置が、自律的な動きをくりかえす。そして、それらは互いに反応し合うように、あるいはリアルタイムに関係することで、現象を連鎖させていく。小林椋は、この《盛るとのるソー》をはじめとした、動きとオブジェからなるインスタレーション作品を継続的に制作。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]にて9月12日から11月26日まで開催する展示では、本作を再構成した作品を発表する。
もとは、音のみを用いたサウンドアートを手がけていた小林。作品内で目を引くカラフルなオブジェは、ドローン(変化のない持続音)と、その音を発生させる「もの」の見た目をいかに引き離すかという試行が始まりだった。「動きや造形は余剰。それらを付け加えることによって、サウンドアートにおける“音を聴く”という特権性から離れられるのではないかと思っていました」。工業製品の一部分を拡大したかのような、無骨であると同時に親しみやすさをも醸すオブジェと動きによって、音は、意味をなさない機能・構造へと擬態していった。
延々と轟くドローンと同様、小林の作品にも終着点はない。オブジェがいくつも配置され、そこにディスプレイと映像を介入させるのは「オブジェ同士の関係性に、異なるレイヤーを追加するため」だと言う。「自分は、事物の連環がつくる環境系と、それを観察することに興味があるのだと思います。人間とは関係なく、構造だけのビオトープをつくってみたい」。3次元と2次元、立体と映像、音と動き。異質なるものからなる生態系で息づく機構は、無意味に、無造作に、調和しているように見える。
(『美術手帖』2017年9月号「ART NAVI」より)