第1章「もつれあう世界」では、3組の作品が展示されている。インドネシア・ジョグジャカルタを拠点とするゲゲルボヨは、同地のジャワ文明がたどってきた侵略から独立に至るまでの歴史を5章にわたって紹介している。「様々な文明による侵攻から良いことや悪いことを学び、現在のジャワがあることを伝えたい」とゲゲルボヨはその意図についても語った。
タイ出身のジャッガイ・シリブートは、2点のテキスタイル作品を出展している。コロナウイルスが世界的に蔓延した最中、タイ政府はその対策に失敗。観光業で成り立つタイでは、多くの失業者を生み出してしまったという。このタペストリーは、失業者たちのユニフォームが再利用されマスクとなったものをさらに解体したものだという。
シンガポールの映像作家で、今年4月には東京都現代美術館で個展を開催したことでも記憶に新しいホー・ツーニェンは、2017年から継続して制作している東南アジアを批評した映像シリーズを本展のために仕立て直し、発表した。AからZまでの用語をテーマに自動編集し再生されるこれらの映像は、全部で26チャンネル。会場内に響きわたる26種類の音声のもつれは、まるで多様な文化が混交した東南アジアを表しているようであり、「東南アジア、そしてすべての国家はひとつの世界であるのか、はたまた複数で成り立っているのか」といったツーニェン自身の問いそのものでもあるという。