リキッドスケープ　東南アジアの今を見る

　アーツ前橋で「リキッドスケープ　東南アジアの今を見る」が開催される。

　今日の東南アジアでは、急速な経済発展と都市開発が進み、変化するライフスタイルのなかで多様な生活が営まれている。いっぽうで、過去の歴史や風景、土地に根差した信仰、自然との関係も社会の底流には存在している。それらはときに融合し、ときには対立しながら急速に変化し、いまの時代の新たな現実、生活のスタイル、世界観を生み出し続けている。

　本展は、このように流動する東南アジア地域の文化、社会の状況を「リキッドスケープ（流動する風景）」と名づけ、ホー・ツーニェンやコラクリット・アルナーノンチャイなど、世界的に活躍する作家に加え、日本初紹介の若手作家を迎えた全12組の作家による展覧会で紹介。今回の参加作家は1980年代以降に生まれた7組の作家を含む若い世代で構成されている。彼らは、東西冷戦の終焉や、インターネット、iPhone、SNS を始めとするテクノロジーの登場、さらには世界の枠組みの大きな変化やアジアの台頭など、グローバルな事件を体験してきた。また、女性作家4組は、女性の身体や社会的位置づけを再考することで、既存の価値観に新たな視点を付け加えようとしている。

　作品に共通して見られるのは、流動する風景のなかで「どこから来てどこへ向かうのか」という問いに答えようとする作家たちの眼差しと試みだ。本展の作品を通して、私たちは東南アジアの多面的世界の一端を知るだけでなく、世界のいたる所に存在する現代社会の矛盾や混沌、新たな希望や可能性に向き合う態度に出会うことができるだろう。