兵庫県立美術館では8月20日から12月8日にかけて、女性作家と女性像というコレクションにおける2つの「女性」に注目した展示、コレクション展Ⅱ「わたしのいる場所─コレクションから『女性』特集!」を開催している。企画は大きく「みるわたし」と「みられるわたし」の章に分けられ、それと呼応するかたちで小磯良平記念室、金山平三記念室、彫刻室などで作家やモデル、画家の妻に注目する関連展示が行われている。
「わたしのいる場所」という企画名は、直接的には同時開催であった特別展「石岡瑛子 I(アイ)デザイン」における「わたし」というキーワードと連動するものだ。しかし同時にこの名前は、近年の「#Me Too」運動や「Where is Ana Mendieta?」といった活動とも結果的に類似し、歴史の中で女性の声を掬い上げる営みと呼応している。筆者自身もこの企画で考えたかったことは、美術史という歴史のなかで、女性はいかにして存在し続けてきたのかということだった。
これを考えるために、本展では作品を提示する方法にできるだけ工夫を凝らした。まず収蔵作家のうち1割を占める女性作家を展示する際には、テーマを先に決めそれにそぐう作品を選択するのではなく、できる限り多くの作品を出すことに専念した(*)。それによって総勢60名を超える作家の作品を一挙に並べられたとともに、出品歴がこれまで1回きりであった作家や作品を多数展示することができた。展示できなかった作家も多数あり、それは悔やまれるところだが、ひとまずおしなべて展示してみるという姿勢は、従来の美術史を問い直したいいっぽうで評価の際に美術史を取り入れなくてはならないというジレンマも少なからず解消したように思う。それによって、まとまって寄贈を受けた日系ブラジル人画家の作品や、近代美術館時代の収集の海外作家の版画・彫刻など、当館独自の作品群がお目見えしているのも、本展の魅力となったのではないだろうか。50年にわたる歴史の中で、兵庫のゆかりや館の特色により自然に集められてきた作品の中に、数多の女性たちの作品が息づいていることに、筆者自身改めて気づかされた。
*──当館の収蔵作家および展覧会でのジェンダー比については、ともに展覧会を担当した橋本こずえ学芸員の下記の論考がある。橋本こずえ「美術館におけるジェンダーバランス—兵庫県立美術館の現状について」(『兵庫県立美術館紀要』第17号、2023、p20-29)
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