リトゥンアフターワーズの美術館初個展がアーツ前橋で。⼭縣良和によるファッション表現の過去から未来までをたどる

⼭縣良和によるファッションレーベル「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」初の美術館展「ここに いても いい リトゥンアフターワーズ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口」がアーツ前橋で開催。会期は4月27日〜6月16日。

リトゥンアフターワーズ It's Alright To Be Here 2024 撮影=エレナ・トゥタッチコワ

 ファッションレーベル「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」初の美術館展「ここに いても いい リトゥンアフターワーズ 山縣良和と綴るファッション表現のかすかな糸口」が、群馬・前橋のアーツ前橋で開催される。会期は4月27日〜6月16日。

⼭縣良和 Field Patch Work 2023 撮影=⽥附勝

 山縣は1980年鳥取県生まれ。2005年セントラル・セント・マーチンズ美術大学卒業。2007年にファッションレーベル「writtenafterwards (リトゥンアフターワーズ)」を設立し「装うことの愛おしさを伝える」をコンセプトに、既成概念にとらわれない様々なファッション表現を試みてきた。2009年にオランダ・アーネム・モード・ビエンナーレにてオープニングファッションショーを開催。2015年には、日本人として初めて LVMH Prizeにノミネート。また、 デザイナーとしての活動のかたわら、ファッション表現の実験と学びの場として「coconogacco(ここのがっこう)」を主宰し多くのデザイナーやアーティストが輩出している。2021年に第39回毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞を受賞。近年の主な展覧会出展に「装飾は流転する」(東京都庭園美術館、2017)「アジアのイメージ」(東京都庭園美術館、2019-20)、「ファッションインジャパン」(国立新美術館、2021)、「ミレーと4人の現代作家たち」(山梨県立美術館、2023)など。

⼭縣良和 撮影=ホンマタカシ

 リトゥンアフターワーズのコレクションは神話などからインスピレーションを得た物語的な表現で知られる。これまでに「装う」⼼の純粋性を追求しながらも東日本大震災からの再⽣を祈った「The seven gods」、ファッション業界へのアイロニーを込めた「Graduate Fashion Show」、戦後と⽇本⼈の集団性をテーマにした「After Wars」、コロナ禍の都市を離れ無⼈島で描いた新しい⼈間像「Isolated Memories」といったコレクションを展開してきた。

リトゥンアフターワーズ Isolated Memories 2023 撮影=濱⽥祐史

 本展は、リトゥンアフターワーズのこれまでの歩みを紹介するとともに、⼭縣が考える⽇本社会とファッション表現の「いま/ここ」を新作インスタレーションで浮かび上がらせるものだメインギャラリーでは、2024年現在の⽇本社会を表象する「メゾン/家」を、リトゥンアフターワーズの過去のコレクションと、群⾺県内の空き家や廃屋から移設した家財道具を組み合わせて表現する予定。

リトゥンアフターワーズ After All 2019 撮影=濱⽥祐史

 また、⼭縣が主宰するファッションの私塾「coconogacco(ここのがっこう)」は、参加する⼀⼈ひとりが⽣きる場所や社会を⾒つめ、「ここ」から独⾃の表現を⽴ち上げていく学びと実験の場をひらく場となっている。本展でも教育者としての⼭縣の思想と実践を伝える「それぞれの個性を育む学び場」を展⽰室内に開設。また、群⾺・桐⽣市出⾝の写真家・⽯内都や『スマホ時代の哲学』で知られる哲学者・⾕川嘉浩らとのトークセッションを⾏い、⾐服の展⽰だけでなく対話やテキストでも、ファッション表現の過去・現在・未来について綴っていく。

リトゥンアフターワーズ After Wars 2017

 ⼭縣は自らの表現について次のように語っている。「⽇々ニュースから⾶び込んでくるウクライナとガザの悲劇、そして能登半島地震と、個⼈では消化しきれない歴史の⼤きなうねりの中で、いま⾃分が表現できるのはとてもパーソナルなこと」

 「あとがき」や「追記」を意味する「writtenafterwards」。ファッションを通してつねに⾃⼰と社会とに向き合ってきた⼭縣の記述を期待する展覧会となりそうだ。

リトゥンアフターワーズ The seven gods 2012

編集部

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