細見美術館、開館25周年で振り返る蒐集の歴史

1998年、京都・岡崎に開館した細見美術館が開館25周年を記念し、2つの展覧会にわたってそのコレクションを紹介する。その第1弾となる「愛し、恋し、江戸絵画 ― 若冲・北斎・江戸琳派 ―」が開幕した。会期は11月5日。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

展示風景より

 京都・岡崎にある日本美術専門の私設美術館・細見美術館。同館がその開館25周年を記念し、「愛し、恋し、江戸絵画 ― 若冲・北斎・江戸琳派 ―」をスタートさせた。会期は11月5日。

 細見美術館は1998年開館。昭和初期に大阪の繊維業の実業家・細見良(初代古香庵)に始まった細見家三代にわたる日本美術の優品約1000点を所蔵する美術館だ。常設展は設けず、琳派や伊藤若冲などの江戸時代の絵画を中心とした展覧会を四季折々に開催してきた。

 本展は、細見美術財団前理事長・二代古香庵(細見實、1922〜2006)とその妻で理事長の細見有子が二人三脚で蒐集した江戸絵画が紹介するものだ。

展示風景より

 初代古香庵が平安・鎌倉時代の神道・仏教美術や密教法具を含む金工品、室町時代の水墨画を蒐集したのに対し、二代古香庵は江戸絵画を中心にコレクションを形成してきた。そのコレクションを展覧する本展は、「細見コレクションと江戸絵画」「若冲と江戸琳派を追いかけて」「愛する作品とともに」の3セクションで構成。特筆すべきは若冲の作品群だろう。

 伊藤若冲はいまでこそ「奇想の系譜」の絵師として人気を誇るが、二代古香庵は若冲が国内でほとんど注目されていなかった昭和40年代から若冲作品を蒐集。先見の明で優れた個人コレクションを形成してきた。

 本展では、二代古香庵が若冲に開眼するきっかけとなった《瓢箪・牡丹図》(江戸中期)をはじめ、雪の白と鶏冠の赤のコントラストが美しい《雪中雄鶏図》(江戸中期)、11匹もの生き物が描きこまれた《⽷⽠群⾍図》(江⼾中期)、黒々とした墨との筆運びが力強さを感じさせる《花鳥図押絵貼屛風》(江戸中期)などが並ぶ。

展示風景より、伊藤若冲《瓢箪・牡丹図》(江戸中期)
展示風景より、伊藤若冲《雪中雄鶏図》(江戸中期)
展示風景より、伊藤若冲《花鳥図押絵貼屛風》(江戸中期)

 この若冲に加え、細見美術館のコレクションを象徴するのが琳派の作品だ。俵屋宗達から尾形光琳酒井抱一、鈴木其一などの代表作家のみならず、江戸後期の中村芳中や明治期の神坂雪佳まで、約350年にわたる琳派の系譜を網羅したコレクション。本展では、酒井抱⼀の《⽩蓮図》(江⼾後期)が鎌倉時代の竹華籠とともにしつらえられているほか、朴の葉に「たらし込み」の技法を用いた鈴⽊其⼀の《朴に尾⻑⿃図》(江⼾後期)など、優品の数々に目を凝らしたい。

展示風景より、酒井抱⼀《⽩蓮図》(江⼾後期)
展示風景より、鈴⽊其⼀《朴に尾⻑⿃図》(江⼾後期)

 本展で示される、細見家ならではの美の競演。⽇本美術のもつ優美さや繊細な感性、⼤胆な⼒強さに⼼を奪われたコレクターのまなざしにふれることができる機会だ。

編集部

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